バケモノの子

今日は、妻と一緒に細田守監督の新作「バケモノの子」を見に行ってきた。

俺の細田作品に対する評価は、(「時をかける少女(2006年)」を除き)つまらないところで保守的な価値観に迎合してしまう姿勢が少々鼻に付くというもの。本作も、まあ、DVDで十分かと思っていたのだが、意外にも妻が見に行きたがっている様子なので、お付き合いさせて頂くことになった。

さて、ストーリーは、母親と死別した主人公の少年がふとしたことからバケモノの世界に迷い込み、そこで出会った暴れん坊の熊徹に弟子入りをして武術家としての腕を磨くというもの。人間のときの名前を失うといったエピソードを含め、「千と千尋の神隠し(2001年)」に似通った導入部であるが、日常から異世界へと足を踏み入れるときの背筋がゾクリとするような感覚は残念ながらあまり伝わってこない。

正直、途中で少しウトウトしてしまったため、正当な評価をするのは困難なのだが、真の敵キャラが暴走に至るまでの動機付けが弱過ぎるため、唐突感を覚えてしまったのは俺だけなのだろうか。その後のアクションシーンでも印象に残るようなものはほとんど見当たらず、今になって思い出そうとしてもなかなか映像が浮かんでこないことに驚いてしまった。

まあ、俺自身、男親の一人として長男や娘の“心の闇”を満たしてあげられるような存在であれば、本作のテーマにもう少し共感できたのかもしれないのだが、俺に熊徹の真似は絶対無理であり、自分の父親にもそんなものを求めた記憶は一切無い。結局、前二作に引き続き、細田監督の理想とする(?)家族感には付いていけないなあという感想になってしまった。

ということで、作中にも登場する「白鯨」と並び、中島敦の「悟浄出世」が参考文献として紹介されていることからも分かるとおり、バケモノの世界に登場するキャラクターのイメージは西遊記のそれなのだが、彼らが暮らしている街の雰囲気はどこか地中海沿岸風。これが、中国憎しの方向に傾きつつある我が国の国民感情に配慮したものではないことを祈りたいと思います。