暴力行為

1949年作品
監督 フレッド・ジンネマン 出演 ヴァン・ヘフリンロバート・ライアン
(あらすじ)
新聞である記事を目にしたジョー(ロバート・ライアン)は、机にしまっておいた拳銃をポケットに忍ばせ、ニューヨークからカリフォルニア行きのバスに飛び乗る。彼に命を狙われているのはカリフォルニアの新興住宅地で建設業を営むフランク(ヴァン・ヘフリン)という男であり、湖で友人と釣りを楽しんでいたフランクは、ジョーらしき男が自分を追っていることを知り、あわてて自宅へ引き返す....


フレッド・ジンネマンが「山河遥かなり(1947年)」に引き続いて発表した初期監督作品。

自宅に戻り、彼の不在中にジョーが尋ねてきたことを妻のエディス(ジャネット・リー)から告げられたフランクは、警察にも通報せずに灯りを消して自宅に閉じこもってしまう。実は、彼等は第二次世界大戦で同じ部隊に所属していた戦友同士であり、どうやらフランクはジョーから命を狙われる理由について何か心当たりがあるらしい。

前半は、その理由が何なのかということが中心になってストーリーは展開し、夫から真実を教えて貰えない妻エディスの苦悩なんかがしっかりと描かれる。そして、中盤になってようやくフランクの口からドイツ軍の捕虜収容所で起こった悲劇の内容が明らかになると、そこから映画の雰囲気は一変し、悪徳弁護士や殺し屋が登場するフィルムノワールの世界が広がっていく。

こういったストーリー構成は、フレッド・ジンネマンがこの4年後に発表した名作「真昼の決闘(1952年)」とも相通ずるところがあり、とても興味深く拝見させていただいたが、残念ながら本作の方はハッピーエンドにはなっておらず、フランクの犯した罪の重さを改めて思い知らされるような結末になっている。

主演のヴァン・ヘフリンにはタフガイ的な役柄が似合うという印象があるが、本作では自責の念に悩まされながらも、自らそれに決着を付けられないでいる弱い男を演じており、これがなかなかの熱演。一方のロバート・ライアンはあまりセリフが多くなく、これといった見せ場が無いのが残念だった。

ということで、ヒロイン役のジャネット・リーは公開当時まだ21歳の初々しさ。デビューしてまだ間がないのに人妻役というのはちょっと珍しいと思うが、この翌年にはあの豪華スター競演版の「若草物語(1949年)」に長女のメグ役で出演することになります。