オクラホマ!

1955年
監督 フレッド・ジンネマン 出演 ゴードン・マクレー、シャーリー・ジョーンズ 
(あらすじ)
1906年、州への昇格を間近に控えたオクラホマ。エレンおばさんの農場を訪ねてきたカーボーイのカーリー(ゴードン・マクレー)は、姪のローリー(シャーリー・ジョーンズ)を今夜開かれる村祭りに誘う。内心では大喜びのローリーだったが、女性にモテることを隠そうとしない彼の態度にカチンときてしまい、村祭りには農場の雇い人であるジャッドと一緒に行くと宣言してしまう…


ロジャース&ハマースタインのコンビによる最初のブロードウェイ・ミュージカルをフレッド・ジンネマンが映画化した作品。

いかにも脳天気そうなイメージが災いしてこれまで未見だったのだが、先日、ようやく見ることができたTVドラマ版「ウォッチメン」で本作が意味深な形(=後でKKKのリーダーだったことが判明するタルサ警察署長ジャッド(!)が、学生時代にこのミュージカルの主役を演じたことがあるらしい。)で取り上げられていたのが気になってしまい、Amazonで中古のDVDを購入して見てみることにした。

さて、そんな訳でやや疑り深い目での鑑賞になってしまったのだが、意外なことに本作には黒人やネイティヴ・アメリカンは1人も登場せず、出てくるのは明るく陽気な白人の男女ばかり。そんな中で唯一の例外がジャッドであり、彼は男手のない農場で熱心に働いているものの、“よそ者”ということもあって人付き合いは悪く、仕事のとき以外はいつも自分の小屋の中に引き籠っている。

これで演じているのがジェームス・ディーンなら良かったのだが、あいにく本作のジャッド役はロッド・スタイガーであり、カーリーからは“Pore Jud Is Daid”とからかわれるし、ローリーに至ってはまるで殺人鬼扱い。余興のボックス・ソーシャルでの扱いも酷いが、極めつけは最後の即席裁判であり、誤ってジャッドをナイフで刺し殺してしまったカーリーは全員一致で正当防衛が認められ、みんなで明るく“Oklahoma!”を合唱しての大団円!

ということで、明るく楽しいミュージカル作品の裏側には陰湿ないじめ=排除の問題が潜んでいた訳であり、TVドラマ版「ウォッチメン」の射程が黒人差別の問題のみに止まっていなかったことが解ったのは大きな収穫。ちなみに舞台の方は昨年ブロードウェイで再上演され、トニー賞のベスト・リバイバル賞に輝いたらしいのだが、最後の大団円は全員がジャッドの返り血を浴びたまま演じられたそうです。