フロム・ヘル

2001年作品
監督 アルバートアレン・ヒューズ 出演 ジョニー・デップヘザー・グレアム
(あらすじ)
1888年のロンドン。娼婦である赤毛のメアリ・ケリー(ヘザー・グレアム)の仲間の一人が、何者かによって喉をかき切られて惨殺されるという事件が発生する。数年前に妻に先立たれ、アヘン中毒のために生きる気力を失いかけていたアバーライン警部(ジョニー・デップ)が事件の捜査に当たることになるが、その後もメアリの仲間の娼婦たちが惨たらしい手口で次々に殺害されていく….


先日読んだアラン・ムーア原作のグラフィックノベルの映画化。

迂闊にも、この作品が映画化されていたことはグラフィックノベル読了後に初めて知った訳であるが、R-15の指定を受けてはいるものの、ジョニー・デップの主演ということであればエログロの方もそれなりに抑えられているだろうという読みのもと、ジョニデファンの妻と娘を誘って一緒に鑑賞。

犯人やその殺人の動機等はほぼ原作どおりであり、映像的にも1888年当時のロンドンの姿が忠実に再現されているようであるが、脚本の方は(ハンサムで独身になった)アバーライン警部による推理物風に再構築されているため、誰が真犯人なのかは終盤まで判らないようになっている。

まあ、あの有名な連続殺人事件の背後にヴィクトリア女王をはじめとする英国王室が絡んでいたというアイデアは、それだけで十分ショッキングであり、こういった筋立てにしたくなる制作サイドの気持ちも分からなくはないのだが、原作を読んで誰が犯人かを初めから知っている俺にとっては、正直、ちょっと退屈なストーリーでもあった。

また、ガル博士の登場シーンが圧倒的に少なくなってしまったため、彼の怪物性がほとんど描かれていない点がとても残念であり、あれでは“私が20世紀を誕生させた”というセリフの意味が観客に伝わらなかったのではなかろうか。フリーメーソンの名前も出るには出てきたが、やはり中途半端と言わざるを得ない。

ということで、本作を家族と一緒に鑑賞したことの裏には、今度の英国旅行の際、わざわざChrist Church Spitalfieldsを見に行くための口実に使うという俺の陰謀が隠されていたのだが、残念ながら本作ではこの教会に関する説明が全てカットされており、俺の陰謀はあっさり水の泡になってしまいました。