拳銃貸します

1942年作品
監督 フランク・タトル 出演 ヴェロニカ・レイク、アラン・ラッド
(あらすじ)
殺し屋のレイヴン(アラン・ラッド)は、ゲイツという得体の知れない男からの依頼を受け、ゲイツのボスを強請っているという男を射殺して、暗号文のような化学式の書かれた紙を取り戻す。しかし、その報酬として受け取った10ドル紙幣は、化学工場から強奪されたものとして警察に番号が届けられており、知らずにその紙幣を使ったレイヴンは強盗犯として警察から追われることに….


ヴェロニカ・レイクとの初共演となったアラン・ラッドの出世作

原作がグレアム・グリーンということで、ストーリーはなかなか複雑であり、終盤になって、事件の背景にゲイツのボスである化学工場の経営者ブリュースターの企む陰謀、すなわち自分の工場で開発した毒ガス兵器を敵国である日本に売り渡すという計画が存在することが明らかになる。

ヴェロニカ・レイク扮するエレンは、基本は、歌に合わせてマジックを披露する女芸人であるが、同時に化学工場での強奪事件を捜査している警察のクレイン次長の恋人であり、さらには、ロサンゼルスでナイトクラブを経営しているゲイツにスカウトされたのをきっかけに、例の“陰謀”の臭いをかぎつけた某上院議員から彼の背後を秘密裡に探ることを依頼されてしまう!

一方、レイヴンの方も、単なる冷酷な殺し屋という訳ではなく、幼い頃に両親を亡くし、冷酷な叔母の虐待を受けながら育ったという同情すべき境遇の持ち主。そのせいで、野良猫や足の悪い少女といった“弱者”には優しいという意外な一面を秘めており、そんな複雑で魅力的なキャラクター設定は、アラン・ラッドの評価アップの大きな助けになっている。

まあ、そんな二人が、ロサンゼルスへ向かう列車内で偶然にも隣り合わせの席になってしまうという展開はいくらなんでも強引過ぎると思うのだが、その反面、これだけテンコ盛りの内容をわずか80分という上映時間内で描ききった手際の良さは評価されるべきであり、上記以外にも、どこかユーモラスなゲイツの用心棒等、魅力的な小ネタが豊富に詰まっている。

ということで、なかなか良く出来たストーリーだと思うのだが、今リメイクするとした場合、エレンの膨らませ過ぎたキャラ設定には相当無理があると思われ、単に同じ列車に乗り合わせただけの行きずりの女という設定にした方が幾分リアリティが増すと思います。