ガラスの鍵

1942年作品
監督 スチュアート・ヘイスラー 出演 アラン・ラッド、ヴェロニカ・レイク
(あらすじ)
街の顔役であるポールはブロンド美人のジャネット(ヴェロニカ・レイク)に一目惚れ。州知事選でも、現職支持から彼女の父親で改革派のヘンリー候補支持へと乗り換えたことから、違法賭博場を経営するニックの恨みを買うことになってしまう。そんなとき、ヘンリー候補のバカ息子が何者かに殺害されるという事件が発生し、自分の妹が彼と付き合うことを快く思っていなかったポールに犯人の疑いがかけられる….


ダシール・ハメットのハードボイルド小説の映画化。

アラン・ラッドが演じているのは、ポールの右腕で彼の容疑を晴らすために活躍するエド・ボーモン。クレジット順ではポール役のブライアン・ドンレヴィヴェロニカ・レイクに次ぐ3番目なのだが、序盤を除いてほぼ出ずっぱりの状態であり、彼が実質的な主役であることに間違いはない。

さて、原作となった小説の方はおそらく学生時代に読んでいるはずなのだが、例によって題名以外は全く記憶に残っておらず、新鮮な気持ちで鑑賞出来てしまう。(あらすじ)からも分かるとおり、登場人物が多い上に人間関係が結構複雑なために最初の方ではちょっと戸惑うものの、殺人事件が発生してからはずっと展開は分かり易くなってくる。

素人探偵のエドはとてもクールな人物として描かれており、ニックの陣営に単身乗り込む際にはあらかじめポールと仲違いしたように見せ掛けておくという策士でもあるのだが、腕っぷしの方はあまり強くないようであり、体格の良いニックの用心棒に殴られてボコボコにされてしまう。

最後は、ニックとの仲間割れを誘うような形でしっかりカタキは取るのだが、やはりハードボイルド物の主人公としてはもうちょっと骨のあるところを見せて欲しかったところ。ただでさえ小柄なアラン・ラッドが、KOされて“軽々と”運ばれて行くシーンを見せられるのは、正直、かなりしんどかった。

ということで、本来ならもっとストーリーに絡んでこなくてはいけないジャネットの出番が圧倒的に少なく、ヴェロニカ・レイクの悪女っぽい魅力がほとんど生かされていないのも大きなマイナスポイント。同時期に公開された「拳銃貸します(1942年)」に比べると、ワンランク落ちると言わざるを得ないでしょう。