にんじん

1932年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ロベール・リナン、アリ・ボール
(あらすじ)
夏休みが始まり、ルピック家の三人の子どもたちが学校から家へと帰って来る。しかし、彼等の母親は、上の二人のことは過剰なほど甘やかすのに対し、“にんじん”と呼ばれる末っ子のフランソワ(ロベール・リナン)には事あるごとに辛く当たり、まるで下男扱い。家庭のことにほとんど興味を示さない父親のルピック氏(アリ・ボール)も頼りにならず、フランソワは一人で孤独な日々を送っていた....


デュヴィヴィエ特集の第11弾は、ジュール・ルナール原作の映画化。

DVD化されるのを長らく心待ちにしていたのだが、一向にその気配が無いためヤフオクに出品されていたレンタル落ちのVHSビデオを安値で落札。映像は決して良いとはいえないが、それがこのビデオ自体の状態によるものなのか、または元々のソースのせいなのかは分からない。

非常に有名なお話しであり、一昨年の「蔵の街かど映画祭」でまことにお粗末なリメイク作品(?)を見せられていたこともあって、ほとんどのストーリーは見る前から頭に入っていたのだが、そこは流石のデュヴィヴィエ作品ということで、結末が分かっていてもやはりとても面白い。

何といっても、主人公のフランソワ少年の、一見、“ひょうきん”にさえ見えるキャラクター設定が功を奏しており、彼のことを心配する大人たち(=教師、家政婦、叔父)に対し、自分自身の家庭内における不幸な体験をまるで他人の笑い話のように面白おかしく話して聞かせるシーンはとても印象的。

そして、そんな痛ましいくらいに健気な性格だからこそ、物語の後半、自暴自棄になって馬車を暴走させたり、遂には自殺を決意するときにおける彼の絶望の深さが一段と際立ってくる訳であり、デュヴィヴィエの周到な計算はいつもながらお見事であるが、それを実際に演じて見せたロベール・リナン(=公開当時11歳)の熱演も高く評価されるべきだろう。

ということで、本作の冒頭におけるフランソワと教師との会話の内容によると、フランソワの髪の毛は赤毛ではなく、ブロンドであるとのこと。白黒映画なので見た目にはよく分からないのだが、実際のロベール・リナンの毛髪はどんな色だったのでしょうか。