わが青春のマリアンヌ

1955年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 マリアンヌ・ホルト、ピエール・ヴァネック
(あらすじ)
ドイツの霧深い森の中にある寄宿学校にアルゼンチンから帰国したばかりの少年ヴィンセント(ピエール・ヴァネック)が転入してくる。ギターの弾き語りが得意という彼は、森に住む動物たちをも魅了する不思議な魅力の持ち主だったが、ある日、不良グループと一緒に湖の対岸に建つ“幽霊屋敷”の探検に出掛け、そこでマリアンヌ(マリアンヌ・ホルト)という囚われの美女に出会う….


ジュリアン・デュヴィヴィエが「アンリエットの巴里祭(1954年)」の翌年に発表した、彼らしからぬ異色の幻想譚。

寄宿学校の建物に使われているのは、鬱蒼としたハイリゲンシュタットの森に建つ古城であり、また、そこで共同生活を送っているのは全員18歳以下の少年たちということで、まるで萩尾望都の初期のマンガに出てくるような乙女チックな世界が舞台となって物語が展開していく。

ヴィンセントが寄宿学校に入れられたのも、“未亡人になった美しい母親に新しい恋人(=ヴィンセントの家庭教師!)が出来たから”という、いかにも“ギムナジウムもの”らしい理由からなのだが、本作が萩尾マンガと決定的に異なるのは、そこにマリアンヌという年上の美女が登場するところ。彼女から“男爵(=普段は人前に姿を現さない。)によって、屋敷内に幽閉されている”という哀れな身の上話をされたヴィンセントは、アッという間に彼女に心を奪われてしまう。

さて、(見終わってから知ったのだが)ネット上の情報によると、ここから先のストーリーは一部で高く評価されているようなのだが、残念ながら個人的な印象としては“どこかで聞いたことのあるような話”であり、事実、物語のオチもかなり早い時点で察しがついてしまった。

ひょっとしたら、本作こそがこういった一連のストーリー群の嚆矢をなす作品なのかもしれないのだが、例えそうだと思って見直したとしても最初の印象が改善される見込みは極めて薄く、要するに、俺自身、この手のストーリーに感動するには歳を取り過ぎてしまったということなんだろう。

ということで、寄宿学校の生徒として登場する少年たちが、主人公を含め、どう見ても子どもに見えない(=ヴィンセント役のピエール・ヴァネックは、公開当時24歳)あたりも大きなマイナス要素であり、もし萩尾望都のマンガで読んでいたら、もう少し印象は良くなっていたかも知れません。