マイマイ新子と千年の魔法

2009年作品
監督 片渕須直
(あらすじ)
昭和30年代の山口県防府市の郊外に住んでいる新子は空想好きな小学3年生の女の子。家の周囲には麦畑しかないのだが、元教師の祖父から千年前にはこの付近に周防の都が栄えていたという話を聞き、当時の様子に一人思いを馳せていた。そんなある日、彼女のクラスに東京から貴伊子という少女が転校して来るが、母親を亡くしたばかりの彼女はクラスの誰とも打ち解けようとしなかった....


高樹のぶ子の自伝的小説をマッドハウスがアニメ化した作品。

マイマイというのは頭にある“つむじ”のことで、おでこの生え際にマイマイがある新子は、その部分の髪の毛が房毛のように逆立っており、彼女の空想が佳境に入るとそのマイマイがざわざわーっとするらしい。

本作は、そんな彼女の日常に起きる出来事を丹念に描いている訳であるが、何と言っても小学3年生ということで大した事件は起こらない。例えば、貴伊子の持ってきた洋酒入りのチョコ菓子を食べて酔っ払ってしまったり、男の子たちと一緒に小川を堰き止めて池を作ってみたりと、まあ、何とも他愛の無い出来事ばかり。

また、新子の想像する周防の都は、先日、「平城遷都1300年祭」の平城京歴史館で見たCG映像よりはずっと生き生きとしていて面白かったものの、こちらの世界でも(超大物は登場するものの)やはり大事件には至らない。しかし、じゃあ、面白くないのかと言われれば、決してそんなことはなく、実はこのDVDも2度繰り返して見てしまったくらい。

まあ、こういった“幸せな記憶”を描いた作品というのは、新子と同時代を生きた人たちに限らず、もっと広い世代の共感を呼ぶのだと思うが、問題なのは、そこに現在の子どもたちが含まれていないこと。おそらく、この作品を楽しめるのは、小学生時代を思い出として懐かしむことの出来る世代に限られるのだろう。

ということで、本作を制作した方々が一体どんな観客層を念頭においていたのかは分からないが、もう少し、今の子どもたちにも興味を持たれるような配慮が必要だったのではないだろうか。子どもが主人公の作品を、結局、大人たちしか楽しむことが出来ないというのは、何だかちょっとイビツな印象が残ってしまいます。