マドモアゼル

1966年作品
監督 トニー・リチャードソン 出演 ジャンヌ・モロー、エットレ・マンニ
(あらすじ)
フランスのある山村で放火等の事件が頻発するようになる。その真犯人は、村人から“マドモアゼル”と呼ばれて敬愛されている都会から流れてきた女性(ジャンヌ・モロー)であったが、村人たちの疑いの目は木材の伐採作業のために村を訪れていたイタリア人季節労働者のマヌー(エットレ・マンニ)に向けられる。しかし、証拠が無いため警察は手が出せず、その間にも次々と新たな事件が….


ジャン・ジュネマルグリット・デュラスの原案・脚本による作品。

“マドモアゼル”は、その呼称のとおり30代後半と思われるオールドミスであり、村の学校で子どもたちに勉強を教えながら生計を立てている。都会育ちということで、その洗練された服装や立ち居振舞いは村の女たちと段違いではあるものの、その一方で、一人住まいの寂しさを村人から同情されている。

本作のクライマックスは、日頃の上品で禁欲的な仮面をかなぐり捨てたマドモアゼルが、イタリア人労働者のマヌーを相手に、野外で一晩中愛欲の限りを尽くすというシーンであり、これによって日頃の欲求不満が満たされたのかと思いきや、その直後に彼女が口にした嘘の告発が引き金になって、哀れマヌーは村人による集団リンチの犠牲になってしまう。

まあ、本作が公開された当時、どの程度まで性表現の自由が許容されていたのかは不明であるが、上流階級の女性と粗野な労働者という組み合わせは、1928年に発表された小説「チャタレイ夫人の恋人」でも既にお馴染みのものであり、今となっては、特に目新しさは感じられない。

しかし、本作では、日頃、個人的には苦手に感じているジャンヌ・モローの存在感がとても効果的に機能しており、イギリス人監督らしい硬質なモノクロ映像と相俟って、単なるポルノ映画とは一線を画した重厚な雰囲気を醸し出すことに成功している。一夜のご乱交を済ませて満足そうに自室のベッドに横たわる彼女の姿は、交尾の後、オスを食い殺して満腹感に浸っているメスカマキリそのものであった。

ということで、本作は町山智浩氏の著書「トラウマ映画館」の中で取り上げられ、一部で再脚光を浴びている作品。同書で紹介されている作品の多くは、怖がりな俺の趣味には合いそうも無いのだが、まあ、機会があれば一度くらいは見てみようと思います。