フロスト×ニクソン

2008年作品
監督 ロン・ハワード 出演 フランク・ランジェラマイケル・シーン
(あらすじ)
ニクソン大統領(フランク・ランジェラ)がウォーターゲート事件で辞任に追い込まれてから3年、英国人のTV司会者であるデビッド・フロスト(マイケル・シーン)はニクソンとの単独インタビュー番組を企画する。その成否は、フロストがニクソンから謝罪の言葉を引き出せるかどうかにかかっていたが、彼の力量を評価していない米国の3大ネットワークはいずれも彼の売込みに応じようとしなかった….


1977年に行われたニクソン元米国大統領に対する“伝説的インタビュー”を題材にした作品。

フロストは、いわゆるジャーナリストではなく、オーストラリアや英国のバラエティ番組で司会者として活躍しているような人物。少し前までは米国でも番組を持っていたらしく、このニクソンとのインタビュー番組を成功させることにより、米国のTV界へのカムバックを果たしたいと考えている。

そんな不純な動機を敵方から見透かされたこともあって、4回に分けて行われるインタビューのうち3回まではニクソン側の圧倒的優位の状況で行われるのだが、その後に起きた“ある出来事”がきっかけとなって、4回目のインタビューではフロストが主導権を握り、遂にはニクソンから自らの非を認める発言を引き出すことに成功する。

その“ある出来事”が実際にあったことなのか、或いはフィクションなのか(=本作中でも、ニクソンはその出来事を覚えていないことになっている。)は判らないが、結果的には、同じ非上流階級出身者であることにシンパシーを覚えたニクソンがフロストに対して塩を送った形になっており、やはり非上流階級出身者である俺はそんなニクソンに好印象を抱いてしまった。

それ以外にも、ニクソンを演じているフランク・ランジェラの熱演もあって、本作におけるニクソンは人間的にとても魅力ある人物として描かれており、そんなところが、正直、ちょっと意外だった。確かに、最後は自分の非を認めるのだが、その後、自分の政治生命が完全に尽きたことを悟った彼の表情は見ていて痛ましい程であり、ついつい同情したくなっちゃうんだよね。

ということで、良くも悪くもロン・ハワードということで、この両者の対決を正面からきっちりと描ききった力量は大したものなのだが、反面、まとも過ぎて少々面白みに欠けるという批判も無きにしも非ず。まあ、本作のように優れた舞台劇を映画化する場合には、ままあることではありますが。