ナインスゲート

1999年作品
監督 ロマン・ポランスキー 出演 ジョニー・デップフランク・ランジェラ
(あらすじ)
古書ブローカーのディーン・コルソ(ジョニー・デップ)は、腕は一流だが、金のためならちょっとした悪事は厭わないという業界の嫌われ者。そんな彼のもとに著名な古書収集家で悪魔学の権威でもあるバルカン(フランク・ランジェラ)からの依頼が入り、最近、バルカンが手に入れた「影の王国への九つの扉」という世界中に3冊しか現存しない稀覯本の真贋を調査することに…


ロマン・ポランスキーの監督によるオカルト映画。

1666年に出版された悪魔の祈祷書「影の王国への九つの扉」には、悪魔が書いたとされる伝説の書「デロメラニコン」(=ラヴクラフトの「ネクロノミコン」のパロディ?)から転載された9枚の版画が含まれており、それを使えば実際に悪魔を召還することが出来るらしい。ただし、現存する3冊のうち本物は1冊だけであり、依頼を受けたコルソは早速調査に取り掛かるが、そんな彼の周辺で奇妙な事件が頻発するように…という導入部は、うん、文句なしに魅力的。

オカルトものだけに怪しい雰囲気満載なのだが、主演のジョニー・デップのちょっぴりトボケた存在感が絶妙なバランスを維持しており、ホラーが苦手な俺でも比較的安心して見ていられる。バルカンに本を譲り渡した直後に自殺したアンドリュー・テルファーの未亡人リアナ、そのテルファーに本を売ったセサニ兄弟といった脇役も個性的でいかがわしそうな人物ばかりであり、途中まで“これは傑作ではないか”と思いながらTV画面に見入っていた。

ところが、「影の王国への九つの扉」の真贋調査の実態は意外に単純であり、3冊目の本の調査に取り掛かる前に9枚の版画の秘密が観客に分かってしまう。また、殺人事件の犯人や謎の美女の正体についても途中で察しが付くような配慮(?)がされているため、結末に対する関心が一向に盛り上がって行かない。最後にちょっとしたドンデン返しは用意されているのだが、正直、取って付けたような内容で感動はゼロ。

ということで、見終わってから調べたところによると原作となった「呪いのデュマ倶楽部」というオカルト小説の内容はなかなか複雑らしく、それを2時間強の映画に収めるために過度の単純化を強いられたのかもしれないなあ。幸い、中古品なら今でも入手可能のようなので、機会があったら読んでみるつもりです。