日曜日には鼠を殺せ

1964年作品
監督 フレッド・ジンネマン 出演 グレゴリー・ペックアンソニー・クイン
(あらすじ)
スペイン内乱に敗れたゲリラのリーダーのマヌエル(グレゴリー・ペック)は、フランス亡命後しばらくは国境を越えて抵抗活動を続けていたものの、いまや年老いて無為な日々を過ごすだけの生活。ある日、そんな彼のもとにパコというスペイン人の少年が訪ねてきて、警察署長ヴィニョラス(アンソニー・クイン)の拷問によって殺された自分の父親の仇をとって欲しいと訴えるが….


ナバロンの要塞(1961年)」で新境地を拓いたグレゴリー・ペックが、老テロリスト役に挑戦した作品。

年老いて慎重(=臆病?)になっているマヌエルは、パコの必死の願いにもなかなか腰を上げようとしないのだが、彼の逮捕に執念を燃やすヴィニョラス署長は、マヌエルの病気の母親を囮に使って何とか彼をおびき出そうと画策する。一方、それに気付いた彼女は、たまたまフランスに行く予定のあった神父のフランシスコ(オマー・シャリフ)に“決して帰ってくるな”という息子への伝言を託して息を引きとる・・・といった具合に、全体の8割くらいはマヌエルが果たしてスペインに戻るのかどうかという点が中心となってストーリーが展開する。

公開当時48歳のグレゴリー・ペックは、彼の売りである知的な魅力を封印し、パコ少年や母親のメッセージを届けてくれたフランシスコ神父に辛く当たるなど、挫折した老テロリスト役を懸命に演じている訳だが、これが当初危惧したような違和感を抱かせることもなく、結構様になっていてまずは一安心。

まあ、テロリストとはいっても敵対する相手が悪名高きフランコ政権ということで、マヌエルは決して悪役として扱われてはおらず、また、彼が過去に行ってきたテロ活動の様子なんかが描かれていないことにも助けられているんだろうけどね。

そして終盤になり、遂にスペインに戻ることを決意してからの彼はいつもどおりの彼であり、モーリス・ジャールの音楽をバックに一人でピレネー山脈を越えていくシーンはなかなか感動的。この時点では既に自らの死を覚悟していた筈だし、死に花を咲かせるっていうタイプでも無いため、ラストはやや物足りなさを感じさせなくもないが、まあ、そんなところも含めていかにも彼らしい老テロリストの最期だった。

ということで、“Behold the Pale Horse”という原題に対して何故このような意味深な邦題を付けたのかちょっと不思議に思ったのだが、調べてみたところ理由は単純で、元々の原作の題名が“Killing a Mouse on Sunday”だったからとのこと。確かに“蒼ざめた馬を見よ”では別の人の小説と紛らわしくなってしまう故、まあ、賢明な選択だったのでしょう。