ノーマ・レイ

1979年作品
監督 マーティン・リット 出演 サリー・フィールドロン・リーブマン
(あらすじ)
アメリカ南部にある紡績工場で働いているノーマ(サリー・フィールド)は、父親の違う二人の子供と一緒に彼女の両親の家で暮らしていた。ある日、ルーベン(ロン・リーブマン)と名乗る男が彼女の家を訪れ、彼女の働く工場に組合を結成するためにやってきたと自己紹介するが、同じ工場で働いている彼女の父親はそんな彼を“共産主義者”と罵って追い返してしまう….


主演のサリー・フィールドアカデミー賞の主演女優賞に輝いた作品。

ノーマは、最初の夫と死別して以降、子供を両親に預けて男遊びを繰り返すという、まあ、いろんな意味で少々だらしのない三十路前の女性。しかし、快活な性格とちょっと美人なところをルーベンに見込まれて少しずつ彼の組合活動を手伝うようになり、次第に彼女自身も自立した女性へと変わっていく・・・

前半は、ノーマやその家族、友人を含む、いわゆるプア・ホワイトの暮らしぶりが描かれる訳であるが、埃っぽい紡績工場で黒人の方々と一緒に単純作業に従事する彼等の姿は、本作の公開された今から30年前の日本人には相当衝撃的だったのではないだろうか。黒人やユダヤ人に対する人種的偏見が根強いのも、ああいった状況の中で自己のアイデンティティを維持するための自己防衛本能みたいなものなのかも知れない。

しかし、そんな描写に時間を割き過ぎてしまったせいか、ノーマが組合活動に目覚めるタイミングが少々遅すぎるような印象であり、本来、ハリウッド映画が最も得意とする“根性もの”に分類される作品なのにもかかわらず、主人公の“挫折”から“再起”へと至る肝心の泣かせどころのエピソードがそっくり抜け落ちてしまっているのは、一体どういうことなんだろう。

また、ノーマ達の活動を妨害する“悪役”が現場の責任者だけというのもあんまりな話しであり、真の悪役であるべき資本家が登場しないせいで、組合潰しの迫力もいま一つ。できれば、ひと睨みでノーマ達を震え上がらせるような魅力的な大物を悪役として登場させて欲しかったところです。

ということで、本作で見事アカデミー賞の主演女優賞を獲得したサリー・フィールドは、まずは評判どおりの熱演を見せてくれている。まあ、役柄のせいか、いまひとつ華がないのはちょっと残念であるが、そんなプア・ホワイト役を自ら買って出た勇気はやはり大したものと言えるでしょう。