イングランド在住の数学者イアン・スチュアートという人が書いた一般向けの数学史の本。
テーマは“対称性”ということであるが、それには図形的な意味だけではなく、方程式における対称性(=変換可能性みたいな意味らしい。)といったことも含まれているのだそうであり、紀元前のバビロニア文明から現代の超ひも理論に至るまで、その対称性に関する数々の発見の歴史が解説されている。
まあ、本書の前半の方は、ガウスやガロアといった著名な数学者に関する興味深いエピソードなんかにも助けられ、理数系の才能に乏しい俺でも何とか興味を持続して読み続けることができたが、第10章の微分方程式における対称性の話しに関してはほぼ理解不能。その後、お馴染みの相対論や量子力学の話題になるのでここでほっと一息つくも、ラストのひも理論はやっぱり難しかった。
こういった本の場合、読者は紹介されている理論の内容を完全に理解しようなんて大それた気持ちは更々持っていない訳で、本書の著者にしても最初からそれを前提に書いているんだと思うけど、少々諦めが良すぎるようなところも見受けられ、もうちょっと読者が理解したような気分になれるよう頑張ってくれても良かったんじゃないかなあ、という気がしないでもない。
ということで、まあ、読む方の力量が様々なために、書く方もどのレベルに合わせて書いたらいいのか大いに悩むところなんだろうけど、この点に関し、アシモフや朝永振一郎なんかは本当に絶妙だったなあ、とつくづく思ってしまうところです。