聖処女

1943年作品
監督 ヘンリー・キング 出演 ジェニファー・ジョーンズヴィンセント・プライス
(あらすじ)
スペイン国境に近いフランスの寒村ルルド。体の弱い少女ベルナデット(ジェニファー・ジョーンズ)は、妹たちと薪拾いに出かけた際、村はずれの洞窟で光に包まれた白衣の貴婦人の姿を目撃する。その噂が次第に周囲へと広がり、村の評判を気にした進歩派の村長は、その噂が迷信であることを明らかにすべく、検察官ヴィタル・デュツワ(ヴィンセント・プライス)に命じてベルナデットを尋問させるが….


ジェニファー・ジョーンズのデビュー作品。

ベルナデットの見た貴婦人が自らを「無原罪の御宿り」と名乗ったことから、彼女が聖母マリアに会ったという噂が広がる。しかし、それを信じられないペライラマアル神父(チャールス・ビックフォード)は、彼女に“その貴婦人に奇跡を見せてくれるよう頼め”と指示し、その結果、湧き出してきた泉がかの有名な「ルルド泉」という次第。

この泉のことは何かで聞いたことはあったが、その背景についてはあまり詳しく知らなかったので、ちょっとは勉強になった。まあ、神父がベルナデットに指示した奇跡の内容は“季節はずれのバラを咲かせること”で、泉とはあまり関係ないと思うんだけど、そんな奇跡を信じる人たちにとって都合の悪いところもちゃんと描いているあたりは、割と“良心的”な作品なのかもしれない。

しかし、あくまで本作のテーマは“奇跡を目撃した薄幸の美少女”な訳であり、一連の事件を理性的に解明しようとする検察官は完全な悪役。彼は、地元の警察署長がベルナデットを違法に拘束しようとするのを止めさせる等、なかなか道理をわきまえた人物なんで、見ていてちょっと可哀想になってしまった。

主演のジェニファー・ジョーンズは、公開当時24歳。少女というにはちょっとという年齢であるが、この頃の彼女はとても清純そうで聖処女という役柄にピッタリ。事実、彼女はこの役でアカデミー賞の主演女優賞に輝いている。また、脇役もなかなか豪華であるが、あの医師役がリー・J・コッブだったってことは最後まで判らなかった。

ということで、ヘンリー・キングらしい誠実にキッチリと作られた作品であるが、反面、やや面白味に欠け、同じ宗教映画であれば前に見た「ゴルゴダの丘(1935年)」のほうが断然見ごたえがある。また、156分という上演時間はいくらなんでも長すぎで、ベルナデットが初恋の人と別れて修道院に向かうシーンで止めておけば、もうちょっとは評価が高かったかもしれません。