奥様は魔女

1942年作品
監督 ルネ・クレール 出演 フレドリック・マーチヴェロニカ・レイク
(あらすじ)
州知事選挙に立候補したウォレス・ウーリー(フレドリック・マーチ)は、婚約者エステルの父親である実業家兼新聞社長の後ろ盾もあって当選確実の状況。そんな折、かつて魔女狩りが行われていた時代にウーリー家の先祖の告発によって火あぶりにされ、樫の木に封じ込められていた魔女のジェニファー(ヴェロニカ・レイク)とその父親ダニエルが現代に蘇り、復讐のためにウーリー家の子孫であるウォレスを誘惑しようとするが….


ルネ・クレールがハリウッド時代に撮ったコメディ作品。

ウォレスの堅物ぶりに手を焼いたジェニファーは、止む無く惚れ薬の助けを借りようとするんだけれど、これを間違って自分が飲んでしまったから、さあ大変。ここから、復讐すべき相手(ウォレス)を愛してしまった娘(ジェニファー)と、何とか二人を引き離そうと必死の父親(ダニエル)の三人を軸としたドタバタ喜劇が展開する。

まあ、同時期に作られたハリウッド製スクリューボール・コメディに比べるとテンションは低めであり、むしろちょっとのんびりした雰囲気さえ漂うような作品なんだけど、そこは名匠ルネ・クレールということで、ドタバタの中にもそこはかとない上品なユーモア感覚が感じ取れる佳品に仕上げられている。

特に、主演のフレドリック・マーチとダニエル役のセシル・ケラウェイ、それにウォレスの友人役として出演しているロバート・ベンチリー(!)といった男優陣による適度に抑揚の効いた大人の演技は安心して見ていられるし、それが醸し出す雰囲気がまたとても心地よい。

これに対して、期待のヴェロニカ・レイクは、まあ、それが彼女の持ち味なんだろうけど、ちょっと表情に乏しく、惚れ薬を飲む前と後での演技の差がよく分からない等、この脚本のヒロインとしては適役とは言いかねる状況。TV版「奥さまは魔女」におけるエリザベス・モンゴメリーのオーバーアクト気味な演技とつい比較してしまうせいもあるとは思うが、正直、もうちょっと素直に笑わせて欲しかった。

ということで、ヴェロニカ・レイクの演技を見るのは「サリヴァンの旅(1941年)」に続き本作が2作目なんだけど、その卓越した容姿には一見の価値があるものの、コメディエンヌとしての才能はイマイチだったみたい。本作も、魔女らしい悪女的な魅力で男性を翻弄するっていう役柄だったら、彼女にピッタリだったかもしれません。