世界にひとつのプレイブック

2012年作品
監督 デヴィッド・O.ラッセル 出演 ブラッドリー・クーパージェニファー・ローレンス
(あらすじ)
妻の浮気相手に暴力を振るってしまったパット(ブラッドリー・クーパー)は、躁鬱病と診断され、8ヵ月間の精神病院暮らし。退院後、両親の家にころがりこんだ彼は、高校教師への復職と、今は接近禁止令の出ている元妻との復縁を目指してトレーニングに励むが、そんなとき、友人の紹介で、やはり心にキズを負った若き未亡人のティファニージェニファー・ローレンス)と出会う….


昨年のアカデミー賞で、出演者が4つの演技部門のすべてにノミネートされたことで話題になった作品。

パットの病は、カッとしたときについ自制心を失ってしまうというものなのだが、それが妻の浮気がきっかけで発症したものなのか、それとも、それ以前から患っていたものなのかが、見ていてよく分からない。

前者だとすれば、悪いのは浮気をした妻であり、彼は哀れな被害者ということになるのだろうが、彼の父親の怒りっぽい性格や、気弱そうな兄とのどこかギクシャクした関係なんかを見ていると、むしろ後者が正解である可能性が大。そして、それが妻の浮気の主要な原因にもなっていたのだとすれば、“悪い”のは彼の方であり、そのイメージは、本作で描かれているものより、随分悪化してしまうような気がする。

勿論、一番悪いのは彼の“病”であり、それを克服してティファニーと結ばれるという本作のハッピーエンドに全く異存はないのだが、その克服できた理由が、薬なのか、ティファニーへの愛なのか、はたまたダンスへの情熱なのかがはっきり描かれていないため、あの後の二人の暮らしがどうなるのか、ちょっと心配になってしまうんだよね。

アカデミー賞にノミネートされた4人のうち、ただ一人、見事主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスの存在感は素晴らしく、決してハリウッド風の美人女優でないところが大変好ましい。彼女との初対面は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011年)」のミスティーク役であり、今後も幅広い役柄での活躍が期待できそうである。

ということで、パットとティファニーがダンスの練習をするときのBGMに使われているのが、ボブ・ディランとジョニー・キャッシュのデュエットによる「北国の少女」。正直、このナッシュヴィルスカイライン・バージョンはあまり好みではなかったのだが、このシーンで流れているのを聴き、いっぺんで大好きになってしまいました。