陽気なドン・カミロ

1951年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 フェルナンデルジーノ・チェルヴィ
(あらすじ)
北イタリアの田舎町。選挙の結果、共産主義者のペポネ(ジーノ・チェルヴィ)が新町長に当選し、司祭のドン・カミロ(フェルナンデル)は機嫌が悪い。新町長を支持する労働者たちが、教会や保守的なカトリック信者を“反動的”といって批判するせいであるが、一方、保守派の住民たちも粗野で無学な労働者たちを馬鹿にしていた….


デュヴィヴィエ特集の第2弾は、「巴里の空の下セーヌは流れる(1951年)」と同じ年に公開されたイタリア=フランス合作映画。

町民は、比較的裕福でカトリック信者でもある保守派の人々と、貧しくて共産主義に傾倒する労働者の二派に分かれて対立しており、司祭のドン・カミロは前者を、新町長のペポネが後者を代表しているという格好。

ムッソリーニが銃殺されたのが1945年ということで、当時の人々が彼の政権と協力関係にあったカトリック教会を敬遠する気持ちも理解できるが、共産主義者になったからとはいえ、即無神論者になり切れないところが凡人の悲しさであり、熱心なカトリック信者であったらしいデュヴィヴィエはそんな人々の日常をやさしい眼差しで描いている。

主人公のドン・カミロは、負けず嫌いで喧嘩っ早く、聖職者としてはあまりにも人間的なキャラクター。しかし、“労働者たちが無学なのは、貧しさのせいで満足な教育を受けられなかったから”と言って彼等を擁護するなど、決して保守派一辺倒という訳ではない。対立するペポネとも実は幼馴染みということで、いざというときにはお互い協力して助け合う。

彼に扮するフェルナンデルは、デュヴィヴィエの代表作である「舞踏会の手帖(1937年)」にも出演していたフランスを代表する名コメディアンであるが、ペポネ役のジーノ・チェルヴィとは正に名コンビであり、この二人で合計5本のドン・カミロ・シリーズが作られたらしい。

ということで、些細なことから始まった大げんかが原因となり、ドン・カミロは山奥の小さな町の教会に転任させられてしまう。お約束とは言え、宿敵ペポネと友情を確認し合うラストは見ていてホットするシーンであり、まあ、美男美女が主役の作品ではなかったけれど、なかなか良く出来た人情喜劇でした。