2005年作品
監督 園子温 出演 吹石一恵、つぐみ
（あらすじ）
女子高生の紀子（吹石一恵）は、父、母、妹との家族４人暮らし。彼女は、自分をいつまでも子ども扱いする父親に対する不満等から、インターネット上の「廃墟ドットコム」というサイトで知り合った“上野駅54”というハンドル名の女の子（つぐみ）を頼って東京へ家出してしまう….
以前、宮台真司氏がネット上で絶賛していた作品。
“上野駅54”ことクミコは、客の求めに応じて家族のフリをするというレンタル家族という仕事を行っており、紀子だけでなく、彼女の妹のユカもそれに参加することになる。一方、二人の娘に家出されたショックから母親は自殺してしまい、残された父親は娘たちの行方を追って東京に出てくる。
本作には「自殺サークル（2002年）」という前作があるらしく、そのサークルが主体となってレンタル家族の事業を行っているという設定。家族に限らず、ほとんど全ての人間関係においてある程度の演技が要求されるは当然のことなんだから、そんなに真剣にならなくてもと思うんだけど、そうした設定の故か、ストーリーはちょっと陰惨な展開になっている。
まあ、親子関係においては、子供が幼い間に限り、例外的にこの演技が不要になる時期があるため、そんな関係に執着してしまう親も存在するんだろうけど、それにしても本作序盤におけるこの両親の絵に描いたような無神経ぶりは日常を通り越してちょっと異常なレベル。
本作の場合、観念的というか、相当程度図式的に構成された脚本のため、そういう作品なんだと言われればそれまでであるが、正直なところ感覚的に納得できるところが少なく、見終わっての満足度も低かった。
また、出演者がいちいち自分の行動やそのときの感情をモノローグで説明するという演出は、観客に監督の意図を正確に受け取って欲しいという気持ちの表れなのかもしれないが、俺のような古〜い映画ファンにとってはやっぱりルール違反のような気がするし、159分という上映時間も長すぎる。
ということで、いかにも宮台氏が好みそうなテーマの作品ではあったが、俺としてはテーマが優れているだけでは映画として満足することができない訳であり、例えば本作で主演の女子高生役に二十歳すぎの吹石一恵をキャスティングしているだけでも相当の減点と言わざるを得ないところです。
