レディ・ジョーカー

「照柿」に続く合田シリーズ第3作目。

物語が進んでもなかなか合田刑事が登場しないので最初ちょっと不安になったけど、読み終えてみるとやっぱり彼の魅力にメロメロ状態(?)であり、とても満足度が高い。彼のストイックな性格には、例えは悪いけどナチス青年将校を彷彿とさせるような“何か”が潜んでおり、おそらく彼の義兄もそんなところに“惚れて”しまったのかもしれない。

テーマとしては、これまで以上に「個人と組織の関係」が繰り返し取り上げられており、警察や検察だけでなく、マスコミや民間の大手企業の中で働く人々の“組織との折り合いの付け方”が描かれている訳だが、まあ、皆さんとても真面目な方が多く、大変だろうなあというのが能天気な組織人である俺の正直な感想。

ストーリーはグリコ・森永事件を下敷きにしており、レディ・ジョーカーの面々が企てた一世一代の大犯罪はより大きな(しかし、ありきたりな)犯罪に飲み込まれてしまう。これは考えようによっては完全犯罪ともいえる大成功な結末なんだけど、作者はそれを単純なハッピーエンドからは程遠い、何とも遣り切れない皮肉なラストに仕立て上げており、このへんのテクニックの見事さにはいたく感心させられた。

ということで、合田刑事は昇任試験に合格して再び本庁にご栄転なされたようであり、今後の一層のご活躍も期待できそう。今のうちから次回作がとても楽しみです。