ボーン・スプレマシー

2004年作品
監督 ポール・グリーングラス 出演 マット・デイモンジョーン・アレン
(あらすじ)
CIAの調査官パメラ・ランディ(ジョーン・アレン)は、ベルリンでCIA内部の横領事件を調査中、何者かによって部下の捜査官と情報屋を殺害され、関係資料まで奪われてしまう。事件現場で採取した指紋を照合したところ、そこから既に中止された“トレッドストーン計画”と殺し屋ジェイソン・ボーンマット・デイモン)の名前が浮かび上がる….


ボーン・アイデンティティー (2002年)」に続く、ボーン・シリーズの第2作目。

インドのゴアで、恋人のマリーと二人、人目を避けて暮らしていたジェイソン・ボーンが、再び国際的な陰謀に巻き込まれるというストーリー。彼の記憶喪失は完全に回復した訳では無く、過去の記憶の断片が未だに悪夢となって彼を苦しめているんだけど、実はその過去の記憶が今回の陰謀の背景と深く関係しており、その両方が相俟ってちょっとシミジミとした印象的なラストへと繋がっていく。

ボーンはCIAや謎の犯罪組織に再び一人で立ち向かう訳だけど、前作のように組織から逃げ回るというより、むしろ組織を手玉に取るといった印象のほうが強く、それが題名のスプレマシー=優位性という言葉の意味するところなのかもしれない。彼に扮するマット・デイモンはもはや完全なハマリ役であり、前作ではあまり目立たなかったキャラが、重要な役として本作に再登場しているのも面白い。

しかし、何といっても本作のレベルをここまで引き上げているのは、監督のポール・グリーングラスの手腕によるところが大きいと思う。ハンディ・カメラを多用したドキュメンタリイ・タッチの映像に加え、短いシーンをスピーディーに繋ぎ合せた編集方法は、本作にリアリティと緊張感を与えることに成功しており、見ていて一瞬も目を離すことができない。

まあ、これを延々とやられたのでは見ている方も参ってしまう訳だが、その点からして108分という上映時間はまさに“丁度よい”時間であり、このへんにグリーングラス監督の良い意味での計算高さを感じることができる。彼の作品を見たのは「ユナイテッド93(2006年)」に続いてこれが2作目であるが、ともに標準を相当上回ったレベルの作品に仕上げられており、どうやらその実力は本物らしい。

ということで、「アイデンティティー」と「スプレマシー」を見終わって、“子供”というキーワードが浮かび上がってきた訳であるが、これがシリーズ最終作「ボーン・アルティメイタム(2007年)」で語られるであろうボーンの生い立ちとどのような関係を持ってくるのか、今のうちから見るのがとても楽しみです。