崖の上のポニョ

“人面魚が気持ち悪い”ということで、あまり乗り気ではない様子の娘を拝み倒し、家族で「崖の上のポニョ」を見てきた。

宮崎駿の手になるものとしては「ハウルの動く城(2004年)」以来実に4年ぶりの新作になる訳であるが、我が家を含む前作の世評が“微妙”だったせいもあり、正直、見る前は若干の不安が頭をよぎらないではなかった。しかし、見終わってみれば十分に見ごたえのある作品に仕上げられており、傑作とはいえないまでも、まあ、満足のいく出来になっていたと思う。

実のところ、「ハウルの動く城」を“難解”というのであれば、宮崎駿のオリジナルになる本作も同様に難解な訳であるが、主人公の年齢を大幅に引き下げることにより、敢えて子供向けである点を強調した結果、ストーリーの破綻(又は説明不足)をあまり気にしないで作品を見続けることが出来るようになっているところがミソ。

まあ、俺としては、「ハウルの動く城」をTVで再見して以来、宮崎アニメにストーリーの一貫性を求めることを放棄してしまっているため、本作でも“街中が海に沈んでしまったのに、住民が全然慌てていないのは何故?”なんてことに悩むこともなく、津波シーンにおける躍動感とか、街の通りを古代の魚たちが泳ぎ回るシーンの異様な静けさ等、宮崎駿の演出力の素晴らしさを十分に堪能させて頂いた。

(先程の疑問に敢えて答えるとすれば、“津波を引き起こした張本人であるポニョを悪者にしないため”ということだと思う。おそらくあの津波による被害は人的にも物的にも0だった筈であり、むしろ車いすの老婆たちが歩けるようになったというオマケまで付いている。勿論、これをご都合主義と批判することは可能であるが、宮崎自身はそんな批判を恐れるより、単純にあの津波シーンを描きたかったのだろう。)

ということで、見終わってからの娘の感想も良好だったようで、まずは一安心。何年先になるのかは判らないけれど、宮崎アニメの次回作にも付き合って頂ければ幸いです。