死刑台のエレベーター

1957年作品
監督 ルイ・マル 出演 モーリス・ロネジャンヌ・モロー
(あらすじ)
インドシナ戦争の英雄という経歴を持つジュリアン(モーリス・ロネ)は、自分の勤務する会社の社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)と恋に落ち、邪魔な社長を殺すために完全犯罪を企てる。計画は成功したかに思われたが、唯一、社長室に忍び込むときに使用したロープを置き忘れるという致命的なミスを犯してしまい、その回収のために現場に舞い戻った彼は、運悪くエレベーター内に閉じ込められてしまう….


ルイ・マルが25歳のときに発表した彼の実質的な監督デビュー作。

ディズニーシーの“ビッグバンドビート”や「グレン・ミラー物語(1953年)」のおかげで、妻や娘もビッグバンド・ジャズには全く抵抗は無いのだが、まあ、世の中にはもうちょっと大人の雰囲気の漂うジャズもあることを知ってもらいたいということで、約1年ぶりに6回目となる我が家での名作鑑賞会を開催。

俺自身も前回見たときから20年以上が経っており、以前と同じ感動を味わえるかちょっぴり不安だったのだが、まだかろうじて“可愛らしさ”の痕跡を止めている公開当時29歳のジャンヌ・モローのアップを見ただけでそんな不安は何処へやら。濃密な“夜”の雰囲気の中へとたちまち引きずり込まれていってしまった。

記憶の中のストーリーと若干異なっていたのは、ジュリアンの車を盗んだ若い恋人たちの無軌道な行動の描写に相当の時間を費やしているところ。練りに練った完全犯罪を成功させるために細心の努力を払ったジュリアンの焦燥や怒り、絶望と、行き当たりばったりに無意味な殺人を犯してしまう若者の脳天気さとの対比がとても面白かった。

しかし、鑑賞後の家族の反応はあまり芳しいものとは言えず、残念ながらマイルスの奏でるBGMにまではとても話題が及ばなかった。確かに、エレベーターに閉じ込められたのがブルース・ウィリスであればものの数分でそこから脱出できた筈であり、そういう作品に慣れてしまった娘の目には本作の主人公はマヌケとしてしか映らなかったらしい。

ということで、妻や娘が本作のBGMに興味を示してくれれば、今夏のニューヨーク旅行の日程にブルーノートヴィレッジヴァンガードでのモダンジャズ鑑賞を加えようと考えていたのだが、今日のところはちょっと無理な様子。仕方がないので、改めて作戦を練り直したいと思います。