世界最速のインディアン

2005年作品
監督 ロジャー・ドナルドソン 出演 アンソニー・ホプキンス 、クリス・ローフォード
(あらすじ)
ニュージーランドの片田舎に住むバート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)は、自ら改良したバイクで数々の国内記録を樹立してきたが、60歳を超えてもスピードに対する執念は未だ衰えていない。そして、長年の夢であったアメリカのボンヌヴィルで開催されるスピード大会へ出場するため、愛車のインディアンと一緒に一人旅立つことになったが….


実在の老スピードマニアを主人公にしたロードムービー。最後に劇的なクライマックスが用意されているんだけど、これも実話に基づいているとのこと。

人生最後の夢を実現させるため、主人公のバートはコツコツと貯めた僅かばかりの資金を元手にアメリカへと旅立つものの、ニュージーランドの田舎育ちという悲しさ故、予想もしなかった“アメリカのルール”に何度か阻まれそうになる。しかし、そこは夢に向かう彼の真っ直ぐな気持が相手を動かし、遂には感動のラストを迎えるっていうストーリー。

まあ、実際には“年寄りだからしょうがないか”っていう感じで大目に見てもらえたケースも多々あったんだろうけど、俺にはそれ以上に時代の差が大きかったんじゃないかと思えた。実はこの作品の舞台になっているのは今から30年以上も昔のことであり、この頃って今と違いルール違反に関しても結構鷹揚だったような気がする。

この作品でも、愛車の整備不良のため大会への出場を一旦は拒否されるものの、最終的にはバートの熱意が大会関係者に通じて出場が認められるっていうエピソードが出てくるんだけど、おそらく現在であったなら確実に彼は大会に出場できなかっただろうし、仮に出場できたとしてもそれは美談にはならなかっただろう。

まあ、どっちが良いのかは微妙なところだけど、最近の赤福報道なんかを聞いていると、この点に関してだけいえば(=まあ、こういう限定が可能なのかっていう疑問もあるが)、俺も“昔の方が良かったなあ”なんて思ってしまうかもしれない。

ということで、ちょっと“出来すぎ”な結末ではあるが、実話なんだからしょうがないか。「羊たちの沈黙(1991年)」以降、冷酷な犯罪者役が多いアンソニー・ホプキンスであるが、本作ではそんなイメージを払拭するように人懐っこい老人役を楽しそうに演じており、なかなか楽しい作品に仕上がっている。