硫黄島からの手紙

2006年作品
監督 クリント・イーストウッド 出演 渡辺謙二宮和也
(あらすじ)
太平洋戦争末期。アメリカ軍の侵攻が目前に迫った硫黄島に陸軍中将の栗林忠道渡辺謙)が赴任してくる。アメリカ留学の経験を持ち、無意味な体罰や自決を禁じる彼に対し、西郷(二宮和也)ら一部の兵士たちは尊敬と親しみを覚えるが、古参の将校たちの中には栗林の方針に反発する者も少なくなかった….


先日鑑賞した「父親たちの星条旗(2006年)」の続編。

あの作品では穴の中に潜っていて、ほとんど顔も見せなかった日本兵の側の状況を描いているんだけど、出演している役者さんもほとんどが日本人ということで、当然、セリフも日本語。戦争に詳しい人が見ればおかしなところもあるのかも知れないが、俺が見た限りでは、「ラストサムライ(2003年)」なんかとは異なり、特に違和感を覚えることはなかった。

さて、前作がアメリカ国内における“後日談”のほうに相当の時間を割いていたのとは異なり、本作の方はほとんどが硫黄島での話なんだけど、それにもかかわらず、戦闘シーンは前作よりも少ないくらい。西郷君なんか退却するだけで、ほとんど敵と闘っていないんじゃないのかなあ。

まあ、この作品が言いたかったことは、前作を含め、従来の多くの戦争物ではエイリアンとしてしか描かれてこなかった敵である“異民族”も、実際は理解可能な“同じ人間”であるということなんだろうし、そのためには胸のすくような派手な戦闘シーンはむしろ邪魔ということなんだろう。でも、これは「出口のない海(2006年)」なんかと一緒で、その分、映画としての面白さが減退してしまったのも事実。前作を見ていなかったら、硫黄島における戦闘の全体像も把握できなかったかもしれない。

ということで、日本側が負傷したアメリカ兵を治療するシーンがあったり、逆にアメリカ兵が投降した日本兵を射殺するシーンがあったりと、イーストウッド監督の“誠実さ”みたいなものは十分に伝わってきた。でもね、日本人としてはこれを見て“白人に理解してもらえた”みたいに喜んでいるだけじゃダメなんであって、こっちも日本人としての誠実さを示すような作品をキチンと作らなくちゃいけないんじゃないかと思いました。

ところで、アメリカ人の方々が、この作品における日本人に対するのと同じ目線でアラブ人の方々を見られるようになるまでには、あとどのくらいの時間が必要なんだろうか?