パンク侍、切られて候

ちょっと本屋に行く暇がなかったので、例によって本棚のサルベージ。町田康の作品を読むのはこれが初めてであるが、どんな理由でこの本を買ったのかは全然覚えていない。

いきなり「大菩薩峠」みたいなシーンから始まるもんで、これからどんな不条理劇が展開されるのかってワクワクしながら読んで行ったら、あっちは主人公が不条理なのに対して、こっちは登場人物の全員というか、その世界自体が不条理という作品でした。

最初の頃は相当ユニークと思われた主人公であるが、その後、続々と出てくる登場人物が皆それ以上にユニークなため、しまいには主人公のほうがまともに見えてくる程。残念ながら目新しいギャグは無かったものの、ラストの腹ふり党と黒和藩士との合戦シーンには不思議な高揚感があるし、スピード感のある展開で最後まで一気に読ませます。

ただ、ラストのオチの付け方があまりにも普通だったのがちょっと不満かなあ。あそこまで行ったんなら、最後は主人公と巨大条虫との一騎打ちを是非見せて欲しかった。

ということで、腹ふり党が一気にブレイクする社会背景とかは全く描かれていないし、解剖学的な事情を全く無視して猿が人語をしゃべり出す・・・。こんな具合に“必然性”を全く無視して物語を語れる時代になったんだなあと思うと、オヤジ世代の俺は何故かシミジミした気分になりました。今度、別の作品も読んでみようと思います。