ステージドア・キャンティーン

1943年作品
監督 フランク・ボーゼージ 出演 キャサリン・ヘップバーン、ヘレン・ヘイズ
(あらすじ)
第二次世界大戦当時のニューヨーク。クラブ「ステージドア・キャンティーン」では、出征する兵士のための慰問興行が連日行われ、一流の俳優やミュージシャンたちが出演していた。“テキサス”等の三人組もこのクラブを訪れ、そこでそれぞれ気になる女性たちと知り合いになるが….


キャサリン・ヘップバーンの昔の出演作を探していて見つけた作品。ほとんど予備知識なしに見たんだが、ちょっと毛色の変わった戦意高揚映画でした。

このクラブには、俳優やミュージシャンの他に、兵士たちのダンスやおしゃべりの相手になってくれる素人女性も沢山いるんだが、彼女らは基本的にボランティア。ただし、中にはショウビジネス界とのコネが目当てで参加している方もいる訳で、この作品ではそんな女の子たちと3人の兵士たちの束の間の淡い恋物語を描いているんだが、作品的にはこのドラマ部分のウェイトは半分以下。

この作品の売りは、何といってもクラブ「ステージドア・キャンティーン」に出演している芸人さんたちの方で、腹話術師からクラシックのバイオリニストまで実に多種多彩な芸を披露してくれる。残念ながら、俺には知らない人の方が多かったが、カウント・ベイシーベニー・グッドマン等の演奏が見られたのは嬉しかった。

で、そんな芸人さんたちのラストに登場するのがキャサリン・ヘップバーン。といっても、別にステージで寸劇を演じる訳ではなく、ドラマ部分のほうに絡んでの出演であり、恋人の出征を嘆く女の子をクサいセリフで励ます役どころ。普通、軍隊の慰問興行というとグラマー系の女優さんの出演が多いと思うんだが、この作品は変に真面目なところがあって、ヘップバーン以外にも実力派系のオバさん女優が大勢出演しているところが面白い。

それと、第二次世界大戦中ということで、ソ連や中国の兵隊さんが友人として大歓迎されるのに対し、日本人のことは当然ながら“ジャップ”呼ばわり。まあ、腹が立つというよりも、今見ると異様さのほうが目立つ訳だが、これが戦意高揚映画の限界でしょう。

1943年の作品という割には映像も音響も状態が悪く、この作品の評価の程が偲ばれるところであるが、逆にそんなところが“秘蔵映像”っぽい有難味を感じさせてくれるという珍品でありました。