スパルタカス

1960年作品
監督 スタンリー・キューブリック 出演 カーク・ダグラスローレンス・オリヴィエ
(あらすじ)
紀元前1世紀のローマ共和国。剣闘士養成所に売られてきた奴隷のスパルタカスカーク・ダグラス)は、そこで剣闘士になるための訓練を受ける。しかし、見世物として命がけの試合を強いられる剣闘士の生活に耐えきれなくなった彼は、仲間と一緒に暴動を起こして養成所を脱出。故郷に帰るため、周辺の奴隷たちも仲間に引き入れた大規模な反乱を起こす。これに困った元老院では貴族のクラッススローレンス・オリヴィエ)を指揮官に指名し、反乱の鎮圧に乗り出すが….


塩野七海の「ローマ人の物語」でも紹介されていたローマ史劇。恥ずかしながら、この本を読むまでこれが史実だとは知らなかった。

同書によると、スパルタカスクラッススが戦ったのは事実だが、クラッススの政敵として登場するグラックスは創作上の人物であり、また、若き元老院議員として登場するジュリアス・シーザーも、実際にはこの時点ではまだ議員になっていなかったらしい。

まあ、所詮ハリウッド映画、事実と違っていても面白ければ許される訳であるが、この作品、意外なことに戦闘シーン等のアクションは比較的抑えめ。逆に、束の間の自由を得た奴隷たちの幸福そうな牧歌的生活を丁寧に描いている。まあ、このへんは自ら製作総指揮も務めたカーク・ダグラスの主義主張もあるのかも知れないが、「ベン・ハー(1959年)」や「クレオパトラ(1963年)」あたりに比べると、あまりお金使ってないような印象。

クライマックスのスパルタカスクラッススの会戦シーンになって、ようやくスケールの大きいローマ史劇っぽくなってくるんだが、いざ始まってみると結末は結構あっさりしていて、いつの間にかスパルタカスが捕虜になっていたっていう感じ。せっかくなんだから、虚実取り交ぜてもっと見せ場をつくってくれればいいのに、やっぱりカーク・ダグラスって真面目なんだよね。

会戦後、反乱軍の死体の山を、これまた顔が識別できるくらいの位置から丹念に撮影しているのは、前半の牧歌的生活の場面との対比を活かそうという意図なんだろうけど、まあ、キューブリックにしてはちょっと月並みかな。

敵役になるクラッススも、彼に扮しているのがローレンス・オリヴィエということで、あんまり悪役らしくない。いっそのこと、グラックスに扮したチャールズ・ロートンと役柄を交代した方が見てる方には分かり易かったんじゃないかな。いずれにしても、「ベン・ハー」の二匹目のドジョウを期待するとちょっとガッカリします。