1933年作品
監督 エルンスト・ルビッチ 出演 フレドリック・マーチ、ゲイリー・クーパー
(あらすじ)
売れない芸術家の二人組、劇作家のトム・チェムバース(フレドリック・マーチ)と画家のジョージ・カーチス(ゲイリー・クーパー)は、列車の中で美女ジルダと知り合いになり、たちまち意気投合。パリで男2人と女1人の“健全な”共同生活を始める。マネージャー役を買って出たジルダは二人の作品の売込みに奔走するが、その甲斐もあってトムの書いた喜劇がロンドンで上演されることになり、彼は単身ロンドンに旅立つ….
この間読んだ塩野さんの「人びとのかたち」にも取り上げられていた作品。俺が今までに見た数少ないルビッチ作品の中では、おそらく一番古い部類に属する訳だが、洗練された演出と随所にちりばめられたギャグの効果で、ほとんど古さを感じさせないあたりは流石なもんです。
映画に出てくる“女性を頂点とした三角関係”の場合、普通、彼女が本当に好きなのは一方だけで、残りのほうとは感違いとか義理、利権がらみっていうパターンが多いと思うんだけど、ここに出てくるジルダはトムとジョージの二人のことが両方とも本当に好きなんだよね。トムの成功によって気落ちしたジョージを慰めるため、一度は彼と結ばれるんだが、そのことを何とか理解したうえで訪ねてきたトムのことも同様に自然に受け入れてしまう・・・ってな具合。
まあ、その後も色々あるんだけど、彼女の行動は一貫して二人に対する“同等の”愛情に基づいている訳で、一度壊れかけた彼等の三角関係が元どおり修復された時点でハッピーエンドという終わり方はちょっと珍しい。まあ、一夫多妻制の逆パターンだと考えればそう奇異なことではないだろうけど、俺には、むしろジルダの母性本能の強さみたいなものを強く感じた。
このジルダに扮したのはミリアム・ホプキンス。先日見た「黄昏(1951年)」でローレンス・オリヴィエの恐そうな奥さんをやっていた人だが、その18年前にはこんな可愛い女優さんだったんだね。相手役のゲイリー・クーパーも若いけど、そんな彼ら以上に若くてビックリなのがフレドリック・マーチ。ワイラーの「我等の生涯の最良の年(1946年)」とか「必死の逃亡者(1955年)」でとても印象的な“家庭人”を演じていた訳だが、そんな彼からは想像がつかないような軽妙なキャラクターを見事に演じていました。
という訳で、俺が今まで見たルビッチ作品の中では、「ニノチカ(1939年)」と並んでこれがベスト。こんなレベルの作品が沢山あるのなら、彼のもっと昔の作品も何とか見てみたいもんだね。