黄昏

1951年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 ジェニファー・ジョーンズローレンス・オリヴィエ
(あらすじ)
田舎町から出てきたキャリー・ミーバー(ジェニファー・ジョーンズ)は、口のうまいセールスマンのドルーエにまんまと騙され、彼と愛の無い同棲生活を送っていた。そんなある日、ドルーエの紹介で一流クラブの支配人ジョージ・ハーストウッド(ローレンス・オリヴィエ)と知り合いになるが、冷え切った夫婦生活に絶望していたジョージはキャリーの純真さに心の安らぎを見出し、二人はニューヨークに駆け落ちする….


キャサリン・ヘップバーンとへンリー・フォンダが共演した映画にも「黄昏」っていう邦題の作品があったけど、こちらはその30年前に公開された名匠ウィリアム・ワイラーの作品。

田舎から出てきた娘と妻子ある男性との不倫の話なんだけど、監督が社会派っていうせいか、あまりロマンチックな話にはなっていない。特に、ジョージと出会うまでの間、キャリーちゃんは縫製工場の女工として酷使されたり、軽薄そうな男に騙されて何と同棲してしまうってな具合に苦労の連続。

ジョージと一緒になってからも、駆け落ちの際、店の金に手をつけてしまった彼に対する世間の風は冷たく、二人は日々の生活費にも事欠く状態であり、せっかく身籠った子供も流産してしまう….。いやー、この作品を見ていると、同じ監督がこのわずか2年後に「ローマの休日(1953年)」を撮るなんてことは全く想像できない。ワイラー監督、よっぽどオードリーの魅力に参ったんだろうなあ。

主演のジェニファー・ジョーンズは、個人的にはあまり美人とは思わないんだが、確かに時々ドキッとするくらい魅力的な表情をみせる不思議な女優さん。そんなところも含めて京マチ子に似てるよね。この作品でも、不倫相手のジョージを馬車の中で一人待っているときにチラッと見せる彼女の表情は、「終着駅(1953年)」のとき同様、とても素晴らしい。

相手役は、“誠実なダメ男”の役をやらせたらこの人の右に出る者はいないと思われるローレンス・オリヴィエ。この作品のジョージ君も、知識や経験は十分あるんだから不倫するにしてももうちょっと上手く立ち回れば良いと思うんだが、イザというときに衝動的に行動してしまい、結果的に自分も周囲も不幸にしてしまう。まあ、それでも観客から見放されたりしないあたりは流石ですが、最後の落ちぶれっぷりは「黄昏」なんて暢気なレベルではないよね。

それと、口のうまいセールスマンのドルーエに扮するのは、「ローマの休日(1953年)」にも出ていたエディ・アルバートで、ジョージ君とは対照的な軽薄で小狡い役柄をいつもどおり好演。しかし、こういうキャラクターで最近まで息長く活躍したんだから、それはそれで大したもんです。