素晴らしき戦争

1969年作品
監督 リチャード・アッテンボロー 出演 ローレンス・オリヴィエ、ジョン・ミルズ
(あらすじ)
社交界の会場には、イギリスのエドワード・グレイ外相、フランスのポアンカレ大統領、ロシアのニコライ2世、ドイツのヴィルヘルム2世とモルトケ参謀総長、それにオーストリアのフランツ・ヨーゼフ皇帝とベルヒトルト外相といったヨーロッパ列強各国の元首や閣僚たちが一堂に会していた。そんな中、オーストリアの大公夫妻が暗殺されてしまい、これが引き金となって第一次世界大戦が勃発する….


リチャード・アッテンボローの初監督作品となる戦争ミュージカル。

勿論、冒頭の社交界の会場は、第一次世界大戦前夜におけるヨーロッパの列強各国の集合離散の状況を判りやすく表現したものなのだが、同時に、実際の戦場に赴くことなどあり得ない国家元首や閣僚といった特権階級の人々にとっての“戦争観”みたいなものを痛烈に皮肉ってみせているのだろう。

このような視点はその後も一貫しており、無能な将校や恥知らずな宗教家たちの指揮の下、一般的な庶民であるスミス一家の5人の息子たちが次々と戦場で無駄死にを遂げていく様子が淡々と描かれているのだが、一方で、そんな風潮に押し流されるようにして戦争にのめりこんで行く大衆の愚かさもしっかりと描いている。

まあ、あくまでもミュージカルということで、劇場や遊園地の遊具等を利用して撮影された映像はむしろ楽しそうでさえあるのだが、それらの間に挟まれるようにして映し出される実際の戦場の様子はなかなかリアルであり、両者の落差の大きさが観客に深い感銘を与える、という仕組みになっている。

実は、俺がまだ学生だった頃、TVの深夜映画で本作が放映されたのを見ていたく感動した覚えがあるのだが、タイトルバックのセンスの良い映像から始まって、映画史上に残る美しくも哀しい名ラストシーンまで、30年以上経ってもその感動は全く色褪せることは無く、素晴らしい作品であることを改めて確認させていただいた。

ということで、まあ、これは決して批判している訳ではないのだが、本作が題材にしているのが、第二次世界大戦ではなく、第一次世界大戦である点がなかなか興味深い。おそらく、本作の優秀な制作スタッフをもってしても、第二次世界大戦以降の悲惨な戦争をミュージカル仕立てにすることは困難だったのでしょう。