偽装の女

1937年作品
監督 ジョージ・スティーヴンス 出演 キャサリン・ヘップバーン、フランチョット・トーン
(あらすじ)
19世紀初頭の英国。オールドミスの姉と二人暮らしのフィービー(キャサリン・ヘップバーン)は医師のブラウン(フランチョット・トーン)に好意を持っていたが、そんな彼女の想いを知ってか知らずか、彼は志願して戦場へ行ってしまう。それから10年、故郷に帰ってきたブラウンは娘盛りを過ぎてしまったフィービーに再会して顔を曇らせるが、その様子にショックを受けた彼女は、娘時代の髪型とドレスで“姪のオリヴィア”になりすまし、彼への復讐を企てる….


すごい題名なので、相当深刻な内容のドラマかと思いきや、至極軽妙なコメディでした。

キャサリン・ヘップバーンは、当時30歳。普通の女優さんならまだまだこれからという年齢かもしれないが、彼女の場合はちょっとフケ顔という特殊事情もあり、こんな“若づくりのオールドミス”という微妙な設定になったのかもしれない。

で、偽装後のオリヴィアであるが、俺の眼から見ても、まあ、それなりには美人。ブラウンをはじめ青年たちにもモテモテという設定には、正直やや辛いところもないではないが、少なくとも翌年公開の「赤ちゃん教育(1938年)」のときよりは、ずっと魅力的に見える。

相手役のブラウンに扮するのは、フランチョット・トーン。我が国では、今やほとんど話題に上ることもない役者さんであり、俺も動いている実物を見るのはこれが初めてであるが、いかにも紳士的な二枚目でこの役にピッタリ。その他、他人の粗さがしに熱心なオールドミスの三人組やがさつだけど主人思いの家政婦など脇役陣の活躍もたいへん楽しかった。

ラストでは、フィービーの目論見は結局失敗してしまうんだが、お互いの真意を知った二人はめでたくハッピーエンド。大監督になる前のジョージ・スティーヴンスらしい、流石によくまとまったコメディでした。

ところで、某サイトの情報によるとこの作品は興行的には失敗だったらしく、「フィラデルフィア物語(1940年)」で再評価されるまで、ヘップバーン自身もやや不遇な時代を過ごしたとのことである。やはり女優にとって容色の衰えというのは大問題なんだろうが、彼女の場合、フケ顔ということで早目にイメージチェンジに臨まなければならなかったことは、かえって幸運だったのかもしれないね。