マーティ

1955年作品
監督 デルバート・マン 出演 アーネスト・ボーグナイン、ベッツィ・ブレア
(あらすじ)
ニューヨークのブロンクスにある肉屋で働いているマーティ(アーネスト・ボーグナイン)は、自分の容貌がコンプレックスとなり、34歳になっても独身のまんま。同居の母親をはじめ、周囲からも結婚をせかされウンザリしていたが、ある日、友人と一緒に行ったダンスホールでパートナーにフラれて涙ぐんでいたクララ(ベッツィ・ブレア)と知り合い、意気投合するが….


1955年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞そして主演男優賞を独占した作品。

せっかくガールフレンドが出来そうなのに、見栄えのパッとしないクララに対するマーティの友人たちの評価は最悪。さらに従弟の家庭における嫁姑の問題が絡んで、マーティの母親までが彼とクララの交際に難色を示す。周囲のこんな反応のせいで、約束していたクララへの電話を躊躇うマーティであったが、最後は意を決して彼女に電話をかけるところでハッピーエンド。

今なら、この手の作品は間違いなくB級コメディに仕立て上げられると思うが、本作は(深刻ではないけれど)それなりにシリアスで誠実な内容のホームドラマになっており、似たような経験を有する多くの男性諸氏(=残念ながら、俺を含む。)の共感を誘う。やっかみ半分にクララのことを酷評するマーティの友人たちの気持ちも良く分かります。

「地上(ここ)より永遠に(1953年)」でシナトラをイジめる残忍な軍曹役が印象的だったアーネスト・ボーグナインが、一転して女性との交際に自信を持てない(ちょっとフケ気味の)青年役を演じているのが何といっても本作の最大の見どころなんだろうが、これがなかなかハマっており、こういったキャリアの積み重ねがその後の彼の悪役ぶりに微妙な影響を与えているのだろう。

また、これも本作の誠実さの反映なんだろうが、ベッツィ・ブレア扮するクララが本当にパッとしない地味〜な女性として描かれているのもちょっと珍しい。まあ、決して観客から嫌われるようなキャラクターでは無いものの、彼女とアーネスト・ボーグナインによるデートのシーンなんかは、正直、見ても仕方がないということで、少々唐突気味ではあるが、あそこで映画を終わりにしたのは正解だと思う。

ということで、作品がもっぱら男性の視点からのみ描かれているあたりがちょっと気になるが、それも時代のせいなんだろうね。同じ年に公開されたデヴィッド・リーンの名作「旅情(1955年)」(=こっちの主役はオールドミス!)がアカデミー賞で無冠に終わったのも、なにかそのへんと関係があるのかもしれません。