ピグマリオン

1938年
監督 アンソニー・アスクィスレスリー・ハワード 出演 レスリー・ハワード、ウェンディ・ヒラー
(あらすじ)
ロンドンの街中で市民の訛りの調査をしていた言語学者のヒギンズ教授(レスリー・ハワード)は、たまたま居合わせたピカリング大佐の前で、“自分ならそこにいる花売り娘のイライザ(ウェンディ・ヒラー)を半年間でレディに生まれ変わらせてみせる”と大見得を切ってしまう。しかし、その話を真に受けたイライザが、翌日、話し方を習いたいとヒギンズ教授の屋敷に押し掛けて来たから、さあ大変…


神話をモチーフにしたジョージ・バーナード・ショーの戯曲を映画化した作品。

言うまでもなく、オードリー・ヘップバーンの「マイ・フェア・レディ(1964年)」の元ネタであり、以前から興味はあったのだが、ミュージカル映画ではないこともあって、長らく放置。しかし、こちらの上演時間は96分とかなりお手軽であり、ちょっとした空き時間を利用して見てみることにした。

さて、当然ながらストーリーはほとんどオードリーの「マイ・フェア・レディ」と同じであり、特に冒頭のイライザとヒギンズ教授が初めてコヴェントガーデンで出会うシーンは、ほぼ丸写し(=まあ、コピーしているのはミュージカル版の方なのだが。)と言っても過言ではないくらい良く似ている。

おそらくより戯曲に忠実な故、アスコット競馬場の名シーンが出てこないのは少々寂しいが、発声のみならず、ダンスやエチケット等に関する厳しいレッスンの様子が描かれているのは興味深いところであり、大喧嘩の末の仲直りというやや唐突なハッピーエンド(=戯曲では仲直りのシーンは出てこないらしい。)もほとんど同じだった。

しかし、主演俳優が異なることによる印象の違いは顕著であり、監督も務めているレスリー・ハワードが演じているヒギンズは、レックス・ハリソンのものよりも相当偏執狂的。Wikipediaによると、バーナード・ショーの戯曲には「当時のイギリスにおける厳密な階級社会に対する辛辣な諷刺」が込められていたそうであり、ヒギンズには元々悪役としての役割が課せられていたのだろう。

ということで、本作がデビュー作となるウェンディ・ヒラーのイライザは、正直、貴婦人に変身する前の方が似合っており、これはオードリーのイライザとは真逆の印象。なかなか面白い作品だったが、また見直すとすれば間違いなくオードリーの「マイ・フェア・レディ」の方を選んでしまうと思います。