水滸伝(四)

四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の四巻目。

本巻には第61回から第82回までが収められているのだが、渋る〈玉麒麟〉盧俊義をかなり強引な手法によって仲間に引き入れた後、彼との城攻め競争に(不本意ながら)勝利した宋江が改めて梁山泊第一位の地位に就くことを了承した第70回終了時点で、好漢の数はついに目標の108人に到達する。

これによって梁山泊の体制が完成した訳であるが、「今やすっかりかたづいたんだから、兄貴が皇帝になって、廬員外を丞相にし、わしらみんな大官になろう。東京(開封)へ押し寄せ、クソ位を奪ったほうが、ここでクソもめしているより、ましじゃないか!」という李逵の魅力的な提案にもかかわらず、宋江の目的はやはり「招安(朝廷に帰順し無罪放免とされること)」だけ。

偶然、天子(徽宗)に接近遭遇する機会を得た宋江は、思わず「わしら3人、この場で一通の赦免状をお願いしない手はない」と口走ってしまうほど招安に前のめりなのだが、これに対する仲間たちの反応は様々であり、おそらく「(朝廷が)われわれを塵あくたと見なしている」状況下での招安は時期尚早と主張する呉用のスタンスが最も現実的なんだろう。

一方、梁山泊征伐に手を焼く朝廷側にとっても招安は魅力的な妥協案なのだが、幸い(?)蔡京、高俅、楊戩、童貫といった奸臣たちが間に入って邪魔をするため、なかなかスムーズに物事は進まない。最後は高俅自らが精鋭部隊を率いて征伐に向かうのだが、108人の好漢が勢揃いした梁山泊には全く歯が立たず、あっさり惨敗を喫してしまう。

結局、「やつらが大軍を率いて攻め寄せて来たとき、ひどい目にあわせて、人も馬も殺し、夢のなかでも震えあがらせるほどにしてから、はじめて招安を受ければ、いささか心意気も示せるというものです」という呉用の提案が現実のものとなり、本巻最後の第82回で晴れて招安が実現することになる。

兵卒の中には「その場で辞去する者も4、5千人いた」らしいが、108人の好漢は全員揃って朝廷に降伏し、それまでの罪を赦されてメデタシメデタシ。でもなあ、招安というのは要するに“プラスマイナスゼロ”っていうことであり、これでは梁山泊の存在自体が無意味だったということになってしまうのではなかろうか。

ということで、李逵、武松、魯智深の暴れん坊トリオがおとなしく招安を受け入れたのはかなり意外だったが、好漢たちに官爵を与えることに関しては朝廷内にもまだ異論があるらしい。次の最終巻ではそのへんのゴタゴタが語られることになるのだろうが、その結果がプラスと出るかマイナスと出るか、正直、予想は全くつきません。