熊野古道(第3日目)

今日は、当初の計画を変更して発心門王子までバスで向かい、そこから本宮大社まで歩く予定。

朝起きると窓の外には小雨が降っており、やはり昨夜の計画変更は間違っていなかったらしい。午前6時半にお願いしておいた朝食を食べてから身支度を整え、7時38分発のバスに間に合うように宿を出る。そのときには上がっていた雨も、「野中一方杉」のバス停でバスを待っている間に再び降り出してしまい、う~ん、今日も一日こんな感じが続くのかなあ。

さて、我々と一緒にそこからバスに乗り込んだのは例の外国人カップルと単独行の女性の3人だったが、彼らは2つ目の「小広峠」で降りてしまい、そこから歩いて本宮大社を目指すらしい。このときはまだ若干の後ろめたさ(?)が残っていたが、その後、バスは湯の峰温泉へと進んでいき、車窓から世界遺産の「つぼ湯」を見つけるとすっかり観光客気分へシフトチェンジ。

湯の峰温泉のバス停からはザック姿の人々が何組も乗り込んできたが、途中で降りるのは少数派であり、残りの方々と一緒に8時46分に「発心門王子」のバス停に着く。心配だったので空のペットボトル2本に水を入れてきたが、そこには自販機やトイレ、休憩所が整備されており、とりあえず雨も上がっているということで元気百倍。

身支度を整えて9時にバス停を出発し、まずは本宮大社とは反対方向へ歩いて行くと間もなく「発心門王子」(9時4分)に着く。そこには赤いお社だけでなく、「滝尻王子」で見たのと同じような世界遺産の石碑が建てられており、おそらくここも熊野古道の要所の一つなんだろう。

9時13分に先程のバス停まで引き返し、今度は本宮大社に向かって歩いて行く。昨日の山道とは違って道は極めて良好に整備されており、うん、これなら観光客気分で歩いても全く問題はないだろう。「水呑王子跡」(9時35分)には、以前、NHKの番組で紹介されていた「腰痛の地蔵」が立っており、TVで見た作法に従って持病である腰痛の快癒を祈願した。

そのしばらく先にあるお地蔵さん(9時52分)も同じ番組で紹介されていたものであり、今日は赤い前掛けを着けている。その先の無人販売所(10時2分)で無農薬のシールが貼られたほうじ茶(@500円)を購入すると、間もなく「伏拝王子跡」(10時13分)であり、併設されている休憩所で梅ジュースとしそジュース(@200円)を飲みながら一休み。

その先からは次第に民家は少なくなり、「熊野古道小辺路 高野へ約78km」の標識がある「九鬼ヶ口関所」(10時41分)の門を潜って最後の山道に入る。ここのハイライトは“ちょっとより道”の看板(11時1分)を左手に入った先にある展望台(11時6分)であり、ここからは大斎原の大鳥居を遠くに眺めることが出来る。

おそらく当初の計画通りに継桜王子からここまで歩いていたら、疲労困憊の故、この展望台はパスしていた可能性が高く、この遠望を笑顔で楽しむことも出来なかったに違いない。そう考えると発心門王子までバス利用に切り替えたのは大正解であり、幸い、ここまで何度かパラついた雨も雨具を出すほどの降りにはならなかった。

さて、ここまで来てしまえばあとは本宮大社まで下っていくだけであり、「祓殿石塚遺跡」(11時22分)~「祓殿王子跡」(11時27分)と歩いて11時29分に「本宮大社」の裏門(?)を潜る。ここから先は完全に観光客の世界であり、彼らに混じって立派な社殿を見て回るが、やはりいつものように正面から入るのとでは少々勝手が違うなあ。

その後、参道入り口の鳥居まで下りてくると、大きなザックを背負った我々の姿を見た地元のおばちゃんが“ご苦労様”と言いながら近づいてきて二人並んだ写真を撮ってくれる。その後、先程展望台から眺めた巨大な大鳥居の建つ「大斎原」(11時56分)まで往復すれば、本日の古道歩きはこれにて完了であり、ここまでの総歩行距離は9.2kmだった。

といってもまだ時刻は早いので、近くの「いっぷく」というお店でめはり寿司&うどんの昼食を済ませた後、13時20分発のバスに乗って「那智大社」に向かう。途中、2度ほどバスを乗り換えねばならず、その上、熊野交通ではICカードが使えないので運賃の支払いにも難儀をしたが、スマホに入れておいた「バスNAVITIME」というアプリはとても良く出来ており、これがなかったらスムーズな乗換えは難しかったかもしれない。

さて、「大門坂」を通り越して終点の「那智山」でバスを降りるが、大社まではまだ石段を上っていかねばならず、すっかり気が抜けてしまった妻はちょっと苦しそうな様子。そうして着いた「那智大社」の社殿はやはりとても立派だが、俺の趣味からすれば先程見たばかりの「本宮大社」には全く敵わない。

しかし、こちらには別の特典(?)が用意されており、それが境内から楽しむ「那智の滝」の眺望。赤い三重の塔の向こうに見える滝の姿はこれまで何度も映像等で見てきたものであり、多くの観光客に混じってそんな絶景を何枚も写真に収めた後は、滝を目指して坂道を下りていく。

重いザックを背負ったまま石段を上り下りするのは大変だが、ようやく「那智の滝」の正面にたどり着いてホッと一息。と思ったら、滝の左手にある朱色の「お瀧拝所」なるものが目に入ってしまい、@300円を支払ってそこへの階段を上っていく。しかし、この場所から間近に眺める滝の姿はまた格別であり、うん、頑張って良かったね。

その後、可愛い八咫烏の置物を購入してから「那智の滝前」でバスに乗り、今度は乗り換えることも無く紀伊勝浦駅に到着。今夜の宿である「民宿こいで」(=2人でわずか5,940円)までは少し歩かなければならなかったが、値段の割にはとても清潔な施設であり、さっそくシャワーを使って一日の汗を流させて頂いた。

ということで、夕食はマグロ料理で有名な「桂城」というお店に行ったのだが、@3,000円のおまかせコースを美味しく頂いていると、突然、店先でマグロの解体ショーが始まる。マグロを持たせてもらったり、スシを握らせてもらった妻は大満足の様子だったが、“今回の旅行で一番記憶に残るのはマグロの解体ショーかもしれない”というのはちょっと困ります。
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