未来惑星ザルドス

1974年作品
監督 ジョン・ブアマン 出演 ショーン・コネリーシャーロット・ランプリング
(あらすじ)
2293年の地球。ザルドスと呼ばれる巨大な空飛ぶ石の頭により、獣人の中からエクスターミネーターに選ばれたゼッド(ショーン・コネリー)は、ある日、彼等を支配しているボルテックスの正体を探るため、単身空飛ぶ石の頭に忍び込み、ザルドスを操っていたアーサーという男を殺してしまう。それに乗ってボルテックスにやってきたゼッドは、そこで不老不死を手に入れた不思議な人々と出会うが….


ジョン・ブアマンの製作・監督・脚本による近未来SF映画。大昔に一度見ていると思うのだが、ほとんど内容が思い出せなくなっていたため、数十年ぶりに再見してみた次第。

本作に描かれている未来社会では、人類はエターナルと獣人とに分かれており、支配階級である前者は優れた科学力によって不老不死の体を手に入れ、民主的で平穏な生活を送っているという設定。しかし、その代償として男も女も性本能を失っているらしく、また、一部には感情まで失って生ける屍のようになってしまった人々も存在している。

一方の獣人は、荒廃した土地でエターナルのための食料生産に従事している人々であり、おそらく生理的には現代人とほとんど変わらない。そして、そんな獣人が繁殖しすぎないように“間引き”を行うのが、ザルドスによって彼等の中から選ばれたエクスターミネーターの皆さんであり、赤い褌姿で馬に跨り、普通の服装をした獣人を銃で殺しまくる。

そんな裸同然の野蛮人が、コンスエラ(シャーロット・ランプリング)をはじめとするお上品なエターナルの女性たちと出会えば、まあ、どんな結果になるのかは容易に想像できるところであるが、何とジョン・ブアマンは、このまるで艶笑話のような設定を使って大真面目なSF的文明論を展開している。

この後の「エクソシスト2(1977年)」でも、キリスト教的知性に対するアフリカの呪術的生命力の優越性というのが重要なテーマになっていたように思うが、それと同様、本作でもボルテックスに象徴される西欧の科学的知性に勝利するのは、アジア人のような格好をした野蛮人たちであり、ザルドスの仮面を身に付けたエクスターミネーターの男たちは、諸星大二郎の描くマッドメンの姿にそっくりだった。

ということで、本作も、60年代後半から70年代前半にかけて流行した反エリート主義的風潮を反映しているのだと思うが、それから30年以上が経過した現在、ブアマンが期待をかけたアジアやアフリカに土着の“生命力”は西欧型資本主義の前に青息吐息の状況であり、まあ、個人的にも大変無念に思っているところです。