とうに夜半を過ぎて

レイ・ブラッドベリが1976年に発表した短編集。最近は滅多にないことなのだが、本屋で見かけたその魅力的なタイトルに惹かれてつい購入してしまった。

お得意の火星ものを含め、SFやファンタジーなど22の短編が収められているのだが、全体的にホラー風味の作品の多いのがちょっと特徴的。まあ、彼の持ち味である心を凍えさせるような“喪失感”は、ホラー小説とも親和性が高いのだろう。

ベテランといことで、各作品ともそれなりのレベルに達しており、最後まで楽しく読み終えることができたのだが、その一方で、これといった飛び抜けた作品が見当たらないのも事実であり、なかなか初期の傑作群を超えられないでいるあたりに一抹の寂しさを覚えてしまった。

ということで、魅力的なタイトルの表題作はかなり短めの作品であり、導入部分はとても良い雰囲気を醸し出しているものの、ラストはちょっと腰くだけ気味。俺の気付いていないような読み方があるのかもしれないが、個人的には「十月のゲーム」のような分かり易い結末を持つ作品の方が印象に残りました。