2011年作品
監督 キャリー・ジョージ・フクナガ 出演 ミア・ワシコウスカ、マイケル・ファスベンダー
(あらすじ)
両親を亡くし、意地悪な伯母によって寄宿制の学校に入れられてしまったジェーン・エア(ミア・ワシコウスカ)は、卒業後、ロチェスター家の家庭教師の職を得る。あまり屋敷に居着かない当主のエドワード(マイケル・ファスベンダー)は、きまぐれで気難しい性格の持ち主だったが、ジェーンの物怖じしない毅然とした態度にいつしか好意を抱くようになり、やがて彼女に結婚を申し込む….
シャーロット・ブロンテの古典的名作の映画化。
映画は、エドワードの秘密を知ってしまったジェーンが、ロチェスター家の屋敷を抜け出すところから始まっており、(あらすじ)に書いたようなエピソードは全て彼女の回想シーンとして描かれる。特に、学校生活に関する描写は極めて断片的であり、その結果、上映時間120分というとてもコンパクトな作品に仕上がっている。
例によって原作は読んでいないものの、本屋で見掛ける文庫本の分厚さから考えてそれなりの大作を予想していたため、正直、少々はぐらかされてしまった気分なのだが、まあ、映像はきれいだし、何かと忙しい現代人が映画鑑賞に費やす時間としてはこれくらいがちょうど良いのかもしれないなあ。
しかし、そのコンパクト化によって失われてしまったものは決して小さくない筈であり、例えば、ヒロインの魅力の根幹を成すべき“自立した女性”とは何なのか、また、それはどのようにして形成されていったのか等々に関する説明が決定的に不足しているため、結局は、美男美女による安直なラブストーリーというイメージを払拭できていないと思う。
また、せっかく薄暗い古城を舞台にしておきながら、深夜に歩き回る人の気配や謎の不審火といったゴシックホラー的な題材をほとんど活用していないのも大変残念。ヒッチコックに監督させていたら「レベッカ(1940年)」と「サイコ(1960年)」を足して二で割ったような大傑作になっていた可能性もあるのだが、まあ、そうすると「ジェーン・エア」でなくなってしまうのが最大の問題か…
ということで、ジェーンを演じているのは「アリス・イン・ワンダーランド(2010年)」でもヒロインを演じていたミア・ワシコウスカという女優さん。我が国では公開が年明けになってしまったが、ギレルモ・デル・トロ監督の「クリムゾン・ピーク」にも出演しているそうであり、そこでどんな演技を見せてくれているのか、見るのがとても楽しみです。