リンダ リンダ リンダ

2005年作品
監督 山下敦弘 出演 ペ・ドゥナ香椎由宇
(あらすじ)
恵(香椎由宇)、響子、望の3人は同じバンドに所属する女子高生。しかし、高校生活最後の文化祭を目前にしてメンバーの一人が指を骨折してしまい、それが原因となってバンドは空中分解してしまう。いったんは途方にくれた彼女たちだったが、偶然ブルーハーツの“リンダ リンダ”を耳にして彼等の曲をコピーすることを思い立ち、韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)をボーカルに加えて猛練習を開始する….


「空気人形(2009年)」のペ・ドゥナがその4年前に主演した青春映画。

女子高生たちが音楽に打ち込む姿を描くという点で、どうしても本作の前年に公開された「スウィングガールズ(2004年)」の二番煎じ的な印象を持ってしまうが、良くも悪くもウェルメイド・ストーリーであった「スウィングガールズ」に対し、本作では出来るだけ虚構性を排除しようとする姿勢が顕著であり、内容的には好対照な作品になっている。

例えば、恵たちの話すセリフにしても説明的な内容は極力押さえられており、その結果、彼女たちの会話をより自然なものにすることに成功している訳であるが、その一方で、バンド解散の直接の原因となった恵と凛子の間の確執の詳細やソンがこの学校に留学してきた経緯といった点等がほとんど説明されていないため、見ていてちょっとスッキリしないところがあるのも間違いない。

まあ、そうはいっても商業映画なので、ラストでは少々不自然な設定を持ち込むことにより、クライマックスの盛上げもそれなりに上手くやっているのだが、作中に繰り返し登場するブルーハーツの音楽の良さとペ・ドゥナ扮するソンの魅力が無かったら、正直、かなり退屈な作品になっていたような気がする。

ソンがバンドの新メンバーに加わったのは全くの偶然の結果であり、ストーリー的にも新メンバーが韓国人でなければならない必然性のようなものはほとんど感じられないのだが、日本語による取り繕った言い回しの出来ない彼女が、日本人では照れてしまって口にできないような素直な感情をカタコトの言葉によってストレートに表現するというアイデアはなかなか秀逸であり、ペ・ドゥナの演技もとても良かったと思う。

ということで、本作の監督である山下敦弘は「天然コケッコー(2007年)」を撮った人。両方とも女学生が主役の作品であるが、主演女優の魅力を引き出すのは得意そうであり、今後の益々の御活躍を期待しております。