空気人形

2009年作品
監督 是枝裕和 出演 ペ・ドゥナARATA
(あらすじ)
ファミレスで働く中年独身男の秀雄が“のぞみ”と呼んでいる空気人形(ペ・ドゥナ)が、ある日、心を持ってしまう。仕事に出掛けた秀雄の不在を見計らい、いつものメイド服を身に着けて一人で町へ出て行った彼女は、そこで目にした様々な人々の暮らしぶりに新鮮な驚きを覚えるが、一番心惹かれたのは、最後に辿りついたレンタルビデオ店の店員である純一(ARATA)との出会いであった….


是枝裕和監督のファンタジー映画。

純一の働いているレンタルビデオ店は、かなりマニアックな品揃えの店らしく、店内にはちょっと昔の洋画作品のポスターなんかが所狭しと貼り付けられている。その影響もあってだと思うが、初めて町に出ていった空気人形が父子家庭の親子やオールドミスの受付嬢、年老いた元教師といった孤独な人々と出会う様子を見ていて、「赤い風船(1956年)」のことを思い出してしまった。

しかし、同じ風船といっても、こっちの風船はかなり特殊な用途のために作られたものである故、内容的にはかなり大人向け(=R-15指定であるが、とても娘と一緒に見る気にはならない。)になっており、テーマは重い。純一に対する空気人形の純愛も悲惨な結末を迎えてしまう。

個人的な好みからすれば、ファンタジー映画らしい、もう少し夢のある展開を期待していたのだが、まあ、人間の場合、心が空っぽでも体の中にはいろんなものがぎっしり詰まっているので、なかなか風船みたいにシンプルにはいかないのだろう。人間の死体が燃えるゴミなのに対し、廃棄された空気人形は燃えないゴミというのもちょっと意外だった。

主演のペ・ドゥナは「グエムル 漢江の怪物(2006年)」にも出演していた韓国の女優さんであるが、本作の見所のほとんどは彼女の体当たりの演技だといって良い。1979年生まれということなので、公開当時30歳ということになるが、とてもそうは見えないスレンダーな肢体は空気人形役にピッタリだし、少々カタコト気味の日本語もかえって効果的だった。

ということで、最近、TVでよく見かける韓国の女性アイドルグループの方々とは一味違った存在感はなかなか魅力的であり、次は彼女が本作の5年前に主演したという「リンダ リンダ リンダ(2005年)」を見てみようと思います。