殺人幻想曲

1948年作品
監督 プレストン・スタージェス 出演 レックス・ハリソン、リンダ・ダーネル
(あらすじ)
世界的な名指揮者であるアルフレッド(レックス・ハリソン)は、若くて美しい妻のダフネ(リンダ・ダーネル)と今でもアツアツの仲。演奏旅行で彼が留守にしている間、気を利かせたつもりの義弟のオーガストが彼女の行動を私立探偵に監視させたことを知り、オーガストを激しく叱りつけるアルフレッドであったが、探偵からダフネがネグリジェ姿で男の部屋に入るのを目撃したという話を聞いた彼は、一転して妻の不貞を疑うことに….


生涯にわずか13本の監督作品しか残さなかったというプレストン・スタージェスの代表作の一つ。

ルフレッドは中年の英国人貴族であり、内心では以前から米国人である妻との年齢差を気にしていたらしく、ほんの些細な出来事がいつしか深刻な疑惑へと進展してしまう。そんな疑惑を胸に彼はオーケストラの指揮をすることになるのだが、頭の中はこれからどうするかということで一杯。

演奏する曲の雰囲気によって報復、赦し、自殺という3通りの解決法を思い付き、コンサート終了後、実行に移そうとするのだが、最後は妻の告白によってはじめから不貞の事実は存在しなかったことが明らかになる。まあ、結局はアルフレッドが一人で心配して一人で納得するというストーリーなのだが、作品自体も彼に扮する名優レックス・ハリソンの一人舞台といって良いだろう。

最初の方で、彼がオーケストラのメンバーとリハーサルを行うエピソードがあり、このどうってことのないシーンが切れの良い演出と彼のオーバーアクト気味の演技によってとても面白いシーンになっていることにまず感心してしまうのだが、彼の真骨頂が発揮されるのは、何といっても例の3通りの解決法を実行に移すシーン。

よく落語で御隠居さんから知恵をつけられた与太郎が、いざ自分でやってみると大失敗というネタがあるが、それと同じで、自分の妄想の中では一部の隙もなくスムーズに行われた筈の完全犯罪が実行の段階ではドタバタ喜劇になってしまう。スタージェスはここでのレックス・ハリソンの一人芝居を長回しで延々と撮っているのだが、それも頷けるほどこのドタバタ劇は面白い。

ということで、長年見たかった作品をようやく鑑賞することが出来た訳であるが、内容的にも期待通りであり、まずは大満足。これでスタージェスの監督作品を見たのは6本目なんだけど、残りの作品を全部見ることが出来るのはいつになるのでしょうか。