2009年作品
監督 サーシャ・ガヴァシ 出演 スティーヴ・“リップス”・クドロー、ロブ・ライナー
(あらすじ)
アンヴィルは、スティーヴ・“リップス”・クドローとロブ・ライナーの二人が中心となってカナダのトロントで結成されたヘヴィメタル・バンド。1984年8月に日本で行われた伝説のメタルフェス「スーパーロック'84」に出演するなど、一時期注目を浴びたもののその後は鳴かず飛ばずの状態が長期間続いている。しかし、50歳を過ぎた今となっても、バンドとして認められたいという彼等の気持ちには何ら変わりもなかった….
実在のヘヴィメタル・バンドであるアンヴィルの“今”を描いたドキュメンタリー作品。
バンドのリーダーであるリップスは、故郷のカナダで食材配達の仕事をしながらバンド活動を続けており、昔からの熱心なファンも少なからず存在する。そんな中、彼等は一念発起してヨーロッパへのコンサート・ツァーに出かけるのだが、素人同然のマネージャーのせいもあってツァーはトラブルの連続であり、締めのコンサート会場も観客はガラガラ。
そんな売れないバンドの悲惨な生活を淡々と描いているのだが、そのような内容にもかかわらず、このリップスという人物の常に前向きな姿勢のお陰で、作品全編に脱力系のコメディ映画を見ているような独特のユーモア感が漂っているのがとても興味深い。
“夢を諦めきれない”というだけなら別に珍しくも無いのだろうが、彼の素晴らしいところは、自分たちの置かれた現状をきちんと正しく理解している点にあり、心は少年のままであっても、大人としての分別はちゃんとわきまえている。そのため、一見すると無謀に思われる彼の行動も、案外安心して見ていられるんだよね。
そして、大手レコード会社に新作CDを没にされた彼等にとってのささやかなクライマックスは、何と再びこの日本の地で訪れるのだが、我々日本人がいくらかでも彼等のお役に立てたことは俺にとっても望外の喜び。あのコンサート会場に詰め掛けて下さった皆様方には、この場をお借りして心から感謝申し上げたいと思う。
ということで、俺の年代からすると、ヘヴィメタの曲というのはみんな同じように聞こえてしまい、どこが良いのかさっぱり理解できないのだが、そんな俺でも本作は最後まで楽しく拝見することが出来ました。