1939年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 ローレンス・オリヴィエ、マール・オベロン
(あらすじ)
北イングランドの荒れ地に建つ洋館“嵐が丘”。孤児のヒースクリフ(ローレンス・オリヴィエ)は、幼い頃にその館の当主に拾われ、彼の実子であるヒンドリーとキャシー(マール・オベロン)の兄妹と一緒に家族同様に育てられる。しかし、父の死により新たに嵐が丘の当主となったヒンドリーは、キャシーがヒースクリフと仲が良いことに嫉妬し、今後、彼を使用人として扱うことを宣告する….
ウィリアム・ワイラーが「西部の男(1940年)」の前年に公開した作品。
キャシーは、粗野な魅力のヒースクリフに強く惹かれながらも、近くに住む金持ちの好青年エドガー(デヴィッド・ニーヴン)との裕福な生活に対する憧れも断ちがたい。結果的には、二人の仲を誤解したヒースクリフが家出してしまったため、キャシーはエドガーと結婚することになるが、数年後、アメリカで成功を収めたヒースクリフが二人の前に現れる・・・
エミリー・ブロンテの原作は読んでいないものの、古典的名作ということで主人公のヒースクリフの名前くらいは知っていたが、本作を見た限りでは主導権を握っているのは明らかにキャシーの方であり、ヒースクリフは彼女の妄想に翻弄されてしまった哀れな被害者のように見える。
しかし、キャシー役のマール・オベロンの演技があまりに凡庸すぎるせいで、肝心の後半におけるヒースクリフとの絡みにおいても、(本作における?)キャシーの人一倍激しいはずの情熱や苦悩といったものが一向に観客に伝わってこないため、なんか普通の三角関係みたいな話になってしまっている。
一方、本作が本格的なハリウッド・デビューとなるローレンス・オリヴィエにしても、ちょと遠慮があったのか、ヒースクリフ役にしては随分と気弱そうな面が前面に出てしまった演技であり、結局、その後の彼の持ちネタの一つとなる“誠実なダメ男”役の原型を見せられているような気がした。
ということで、ストーリーをキャシー中心にこじんまりとまとめ過ぎてしまったような印象が強く、文芸大作の映画化としては相当に物足りない。まあ、「嵐が丘」については本作以外にも何度か映画化されており、中にはあのルイス・ブニュエルがメキシコで監督した作品もあるようなので、機会があったらそちらも見てみたいところです。