パンズ・ラビリンス

2006年作品
監督 ギレルモ・デル・トロ 出演 イバナ・バケロ、セルジ・ロペス
(あらすじ)
内戦終結後もフランコ政権の圧政に苦しむスペイン。オフェリア(イバナ・バケロ)は、母親と一緒に彼女の再婚相手であり、山奥でゲリラ掃討にあたっているビダル将軍(セルジ・ロペス)の元に引き取られる。その夜、オフェリアは妖精によって太古の迷宮へと導かれ、そこで彼女を出迎えた“パン”から、彼女が地底にある魔法の国のプリンセスの生まれ変わりだと告げられる….


パコと魔法の絵本(2008年)」がちょっと期待ハズレだったこともあり、口直しということで同じく少女が主役のファンタジー作品を鑑賞。

パンの説明によると、オフェリアが満月の夜までに3つの試練をクリアすれば、彼女は再び魔法の国に戻ることが出来るということで、さあ、ここから夢と魔法のファンタジーワールドが始まるのかと思いきや、全くそういう展開にはなっていかない。

上映時間の7〜8割は、オフェリアを取り巻く現実社会の描写で占められており、身重の母に冷酷な義父、そしてゲリラとの抗争に明け暮れる日々といったとても暗〜い状況に充ち溢れている。また、肝心のファンタジーの方も、大体、案内役であるパンの造形からして相当に異様であり、オフェリアに与えられる試練の内容もネバネバ、ヌタヌタっていう感触でとっても気持ちが悪い。

こんな感じで、期待していたのとは全く異なった内容だったんだけど、これがつまらないかというと全然そうではなく、最初から最後まで目が離せないほどとっても面白かった。脚本的には善人と悪人の描き方が単純すぎるといった不満も無いではないが、まあ、そこはファンタジーということで十分許容範囲内。むしろ、これだけの内容をよく2時間以内に収めたというべきだろう。

また、アカデミー賞で撮影賞、美術賞&メイクアップ賞を獲得したという映像は誠に見事であり、しっとりとした奥行きのある特殊効果はハリウッド映画におけるそれとは全く異なった魅力を見せつけてくれる。うーん、できればこういった優れた映像を邦画で見たかったところです。

ということで、ラストは相当にせつない結果となってしまうんだけど、幼い弟の命を必死に守ろうとしたオフェリアの勇気には、恥ずかしながら素直に感動してしまった。この監督の作品を見たのは本作が初めてだった訳であるが、今度は別の作品も見てみたいと思います。