青ひげ

娘のお付き合いで滅多に行かない本屋に行ったら、なんとカート・ヴォネガットの「青ひげ」と「タイムクエイク」の文庫本が平積みしてあるのを発見。昨年、「ガラパゴスの箱舟」を読んだ後に探したときにはAmazonでも品切れだったんだけど、その後、再販されたらしい。

本作は、架空の画家ラボー・カラベキアンの“自伝”というスタイルをとっており、彼の語る“現在”と“過去”のエピソードが、例によってコラージュ風に配置されている。これは、先日DVDで見た「エディット・ピアフ 愛の賛歌」と似た手法であるが、こちらでは主要な登場人物の“その後”はそれなりにきちんと描かれており、まあ、安心して読み終えることができる。

「青ひげ」という題名は、カラベキアンの住む敷地内に厳重に鍵のかけられたジャガイモ小屋があり、居候の女流作家がその小屋の中をしきりに見たがるというエピソードにちなんで付けられたものであるが、彼女が屋敷を去ろうとする前の晩になってようやくジャガイモ小屋の秘密が明かされるっていうところが本作のクライマックスになっている。

カラベキアンは、第二次世界大戦後、一世を風靡した抽象画家(=しかし、ある事件をきっかけに、現在は失意の日々を送っている。)という設定であり、このことがこのクライマックスの伏線になっている訳だけど、抽象画について好悪の判断が付きかねている今の俺にとって、このクライマックスの評価も非常に難しいところです。

ということで、何はともあれヴォネガットの未読の長編を読むことができ、誠に喜ばしい限り。実は、唯一文庫化されていない長編の「ホーカス・ポーカス」も古本で入手しており、今後、楽しみながら少しずつ読んで行きたいと思っています。幸せ・・・