巴里のアメリカ人

1951年作品
監督 ヴィンセント・ミネリ 出演 ジーン・ケリーレスリー・キャロン
(あらすじ)
アメリカ人のジェリー・ミュリガン(ジーン・ケリー)は、パリで修行中の売れない画家。彼の絵(と彼自身?)に興味を持った裕福なアメリカ婦人のミロからスポンサーの申し出を受けるが、たまたま彼女と一緒に行ったキャバレーでジェリーは清楚なパリ娘のリズ(レスリー・キャロン)を見染め、一目惚れしてしまう….


ジョージ・ガーシュウィンの「巴里のアメリカ人」を主題としたミュージカル作品。あまりにも有名な作品ではあるが、ちゃんと鑑賞するのは実は今回が初めて。

ジェリーの果敢なアタックが功を奏し、リズも彼に恋心を抱くようになるのだが、彼女には戦時中大変世話になったアンリというフィアンセがいるため、結局、二人は別れる羽目に。そして、その去っていったリズを想って演じられるのが「ザッツ・エンタテインメント(1974年)」の大トリを飾ったあの17分間半に及ぶダンス・シーンということになる。

ドラマ部分の核になるのはジェリーとリズの“純愛”の筈なんだけど、ジェリーに扮するジーン・ケリーが既に立派な大人(=実年齢でも、ミロやアンリ役の俳優さんより年上!)であるため、いくら白のセーターや野球帽(?)で若づくりに努めていても、“大人の都合によって翻弄される若き恋人たち”っていう雰囲気が見ている方にほとんど伝わってこない。

それ故、“若さ”という免罪符を持たないジェリーの行動はやはり“身勝手”という印象の方が強く、残されたミロやアンリの気持ちを考えると、折角のラストのハッピーエンドもなかなか素直に喜べない。

また、本作が映画デビュー作となったレスリー・キャロンの方もちょっと表情が固く、正直、あまり可愛く撮れていない。彼女の場合、元々、美人というより、ファニー・フェイス系の顔立ちなもんで、ハツラツさが感じられないと相当微妙な印象になってしまうんだよね。

ということで、ドラマ部分はいま一つの出来であったが、「I Got Rhythm」や「'S Wonderful」といった名曲が歌われるシーンはとても楽しく、また、モダン・バレエを取り入れたクライマックスのダンス・シーンは文句なしに素晴らしい。例えば、ミロ絡みのエピソードを削る等してドラマ部分を簡素化し、代わりにもう1、2曲追加していてくれたならきっと最高だったと思います。