物語 アイルランドの歴史

別に「リヴィエラを撃て」を読んだからという訳でもないんだけど、かねてから、一度、アイルランドの歴史をさらっとおさらいしておきたかったので、波多野裕造という方のお書きになった本書を読んでみた。副題は「欧州連合に賭ける“妖精の国”」。

作者は、アイルランド大使もお務めになられたという経歴の持ち主であるが、元々は新聞記者の出身ということで、そのせいもあると思うんだけど、文章の中にやたらと固有名詞が多く、読んでいてどうもそれが引っかかる。

いや、その人名なり、地名なりが重要なのであればいいんだけれど、本文中に1回しか登場しない人物とか、掲載されている地図にも載っていないような場所について、いちいち固有名詞を上げて説明されても、正直、なんの印象も持ち得ない。

まあ、現代に近づいてくるに従って次第に情報量が多くなってくるため、登場人物のキャラクターなんかも明確になってくるんだけれど、俺としては近世以前の時代により興味があったので、その意味でもちょっと期待ハズレ。また、読んでいて作者のアイルランドに対する思い入れなんかはあまり感じられず、タイトルにある“物語”とか副題の“妖精の国”という言葉も適当とは思えない。

ということで、地理的にいえば北海道と本州みたいな関係(?)にあるアイルランドとイギリスとが、長年にわたって対立したまんまというのは、ローマ化された地域とそうでない地域というボタンの掛け違いがあったにしろ、ちょっと不思議な感じ。まあ、差別的な関係は、それがどんなに長期間に渡ったとしても、当事者間の溝を埋めることはできないということなんだろうけどね。