小津安二郎先生の思い出

ライラの冒険 黄金の羅針盤」を見に行ったとき、妻と娘が併設されているショッピングセンターでお買物をしたいというので、待っている間のヒマつぶし用に本屋でたまたま目に入った本作を購入。200ページ強のボリュームの上、後半の四分の一は作品リストということもあって、あっという間に読了。

小津作品の常連であった笠智衆によって口述筆記形式で書かれた本なんだけど、「若人の夢(1928年)」以後、一作を除き、すべての小津作品に出演していたということを本作で初めて知り、ちょっとビックリ。当然、最初の頃は役名もないような端役から始まって、初めての大役がこの前に見たばかりの「一人息子(1936年)」の教師役。そして、これが認められたことにより「父ありき(1942年)」で初主役に抜擢されたのだそうである。

まあ、当時から相当の時間が経っているせいか、本作で紹介されている小津のエピソードは期待していた程のものでは無かったものの、彼自身が代表作という「東京物語(1953年)」での役作りの話なんかはなかなか興味深く、もう一度、映画を見ながら確認してみたいと思った。

また、小津作品で特徴的なあのセリフ回しがすべて小津の指示どおりだったという話を読みながら、彼や佐分利信なんかが実際に小津の前で脚本読みをしている場面を想像すると、何だかとても可笑しかったです。

ということで、内容的にはちょっと物足りないところもあるんだけれど、そのあたりにかえって朴訥とした笠智衆のキャラクターを垣間見ることができ、読み終わっての不満はありませんでした。